ダイバーシティ四季感 ー会員間をリレー形式でつなぐ雑記帳ー

セラミックス誌
2020年1月号掲載
(No.13)

  私の研究室は女子学生と留学生の数が多いため,まず,日本における“女子学生”の誕生について調べました.1913年,創立から間もない東北帝国大学は,独自の判断で4名の女性の受験を認め,3名の日本初「女子学生」が東北大学で誕生したのが始まりです.それからまた期間が空きましたが,1922年,2名の女性が理学部数学科に聴講生として入学され,翌年から,正規の学生として毎年女子学生が入学するようになったそうです.私が所属している研究科では,女子学生は全体の約3割を占めておりますが,私の研究室では,特に女子学生の数が多いです.一時期,日本人の学生は女子学生のみとなった期間もありました.
 また,東北大学は,建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ,外国人研究者・留学生も積極的に受け入れております.私の研究室ではインドネシアや中国の留学生が数多く在籍しております.日頃研究室内では,言語はもちろん,文化や生活習慣の異なる多様性に溢れています.お互いの違いを認め合い,ポジティブな刺激を感じながら,面白い研究アイデアが生まれることに期待しています.
  次は,城崎由紀さんにバトンをお渡しします.
 

 (東北大学 殷 澍) 

セラミックス誌
2019年10月号掲載
(No.12)

  『女性研究者』に注目が集まることが多々ありますが,性別が女性で研究をしている人のことですので,既婚,未婚,子どもの有無にかかわらず,女性の研究者は『女性研究者』です.今はまだ人数が少ないので良くも悪くも注目される機会が多いのでしょう.女性研究者を増やすためには,工学系に進学する女子学生を増やす必要があります.工学分野を目指す子ども達を増やせるよう,彼女たちの憧れの存在となるべく,カッコよく,スマートに,楽しく働きたいものです.
 昨年度末,一番下の子が保育園を卒園しました.我が家の子ども達は保育園に10年間お世話になったのですが,たった10年で福岡の田舎であっても男女共同参画が進んだように感じています.10年前は我が家の夫も含め,送迎時にお父さんの姿を見る機会があまりなかったのですが,ここ数年,ぐっと増えてきました.たった10年ではありますが,確実に時代は変わっています.
 研究は競争の世界ですが,一人で行うことはできません.他者との違いを認め,『困ったときはお互いさま』の精神を持つことがダイバーシティ(多様性を受け入れる社会)につながると思っています.
  次は,殷澍さんにバトンをお渡しします.
 

 (九州大学 稲田 幹) 

セラミックス誌
2019年7月号掲載
(No.11)

  今回,本欄執筆のお話をいただき,「ダイバーシティ(Diversity)」と男女共同参画社会について考える機会を頂戴しました.これまでも先生方が述べられているようにSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)分野で学ぶ女子学生の少なさは日本のみならず国際的な課題となっていると聞きます.私自身は研究職を目指すことに全く反対された事ありません.しかし,オープンキャンパスでお会いする方や,周囲の女性と話していて感じるのは,理系に苦手意識を持つ母親や理系を敬遠する女性が多いということです。私はこの女性自身の意識から変えていく必要があると考えています.STEM分野の女性研究者のための環境整備と促進事業が展開され,多くの取り組みが進められております.同時に,今の女性研究者の多様なライフスタイルとロールモデル,そこから学ぶキャリアパスを社会に示し,女性のもつ価値観を変えていくことも大事と考えます.そのために,私には何ができるか,何をすべきかを考えながら,今日も頑張りたいと思います.
  次は,稲田幹さんにバトンをお渡しします.
 

 (大阪大学 後藤 知代) 

セラミックス誌
2019年4月号掲載
(No.10)

  皆様は,自分の所属する組織がどのようなダイバーシティ推進に取り組んでいるかを具体的にご存知でしょうか?筆者は昨年まで,いくつかの取組について漠然と知るのみでした.今年度,所内のダイバーシティ推進室へ出向となり,女性の活躍推進,外国人研究者の支援,ワーク・ライフ・バランスの実現等,多岐にわたる取組を行う中で,ようやく状況を把握できてきたように感じます.
 女性の活躍推進においては,現職員のための環境整備のみならず,これから研究者となり得る理系女子学生に向けた研究所・研究職紹介等も行っています.このような活動は,女性管理職比率や女性採用比率等の数値目標を盛り込んだ女性活躍推進法の行動計画等に基づいています.数値目標を定めることについての賛否は様々かと思いますが,現場では,法律に基づく数値目標があることで取組を促進できる部分も大きいと感じています.将来的には数値目標がなくても,ダイバーシティ推進が実現する世の中になることを願っています.今後も出向先での経験をもとに,様々な場所でダイバーシティ推進に関わっていければと考えています.
  次は,後藤知代さんにバトンをお渡しします.
 

 (産業技術総合研究所 中村 真紀) 

セラミックス誌
2019年1月号掲載
(No.9)

  日本の女性研究者割合は諸外国に比べて低く,中でも理工系分野において特に低い状況です.改善のための様々な取り組みがなされていますが,現場の研究者は,そもそも理工系に進学する女子学生が少ないのだから仕方ない,と諦めに似た気持ちを抱きがちです.先日,科学史を専門とする研究者から「理工系研究職に女性が少ないのは,一部の層の関心しか集めない状況を放置してきた結果」という趣旨のご意見を頂きました.これまでは,昼夜問わず実験・研究に没頭できる体力・気力・家庭環境の三拍子揃った一部の人材が理工系研究職を選び,この分野を支えてきたのでしょう.
 一方,幼少期からのジェンダーバイアスに加え,博士進学・就職後のキャリアパスの不透明さ,身近なロールモデルの不在,家庭との両立の困難な職場環境(任期付きポスト,長時間労働など)といった様々な要因により,理工系研究職は多くの女性の関心を集めるだけの魅力に欠けているということです.女性にも男性にも働きやすい職場環境を整備し,研究職の魅力を向上させていくことを諦めてはならないと思います.それは,理工系分野全体のためでもあるからです.
  次は,中村真紀さんにバトンをお渡しします.
 

 (産業技術総合研究所 大矢根 綾子) 

セラミックス誌
2018年10月号掲載
(No.8)

  「貴方は変わっているから,研究者に向いていると思う.」父から言われたこの言葉は,筆者の進路決定に大きな影響を与えた.ならばと研究の世界に入って早20年.周囲には,さらに変わった(誉め言葉だと思う),個性的な研究者が多くいる.特に女性研究者は,際立って個性を発揮していると感じる.そのような方と接すると,感服すると同時に,筆者にはこのようなオーラはないと落ち込んでしまう.名古屋大学男女共同参画センター長の束村博子先生は,「控えめな研究者がいてもいい.多様な研究者がいるからこそ,後に続く人が出る.」とおっしゃって下さる.この言葉にいつも励まされている.
 筆者は,研究ができる環境にいることを,つくづく幸せに感じている.咄嗟に気の利いた発言をするのは苦手だが,より時間のかかる研究や執筆活動を通じて,自分らしさを表現できるし,それを認めてくれる人もいる.学生も十人十色.瞬発力のある学生は目立つが,黙々と考えた末に,教員を唸らせるアイディアを持ってくる学生もいる.多様な人材がベストパフォーマンスを発揮できる社会.それを目指し,社会の一構成員として努力したい.
  次は,大矢根綾子さんにバトンをお渡しします.
 

 (名古屋大学 鳴瀧 彩絵) 

セラミックス誌
2018年7月号掲載
(No.7)

  1960年代の米国では平等を求める黒人による公民権運動の嵐が吹き荒れました.このとき反対派は,人種だけでなく性別による差別をも禁止する条項を加えて反対者を増やし,公民権法案全体の否決を狙ったのですが,法案は可決,結果的に女性は大きな権利を手にしたのでした.すなわち、女性が大統領候補になる米国でさえ、女性が男性と平等の権利を獲得したのはわずか50年前,しかも,それは人種差別撤廃のおまけという棚ぼた的なものだったのです.また,多くの国際機関が立地するスイスは、平和と平等の国のような印象がありますが,実はこの国で女性参政権が完全に認められたのは,なんと1991年のことです.このように男女雇用機会平等の歴史は実はまだ浅いのです.それでも,日本の雇用環境は,女性が結婚とともに離職する寿退社が当然だった30年前とは様変わりしています.私の学生時代に女性の教授を見かけた記憶はほとんどありませんが,今では研究教育の場で多くの女性が活躍しています.道は半ばです.あせることなく,多様性をパワーとする社会に向けて地道に努力していくことこそ重要であると思います.
  次は,鳴瀧彩絵さんにバトンをお渡しします.
 

 (慶應義塾大学 今井 宏明) 

セラミックス誌
2018年4月号掲載
(No.6)

 仕事は人が動かすもの,どんな仕事にも個性が反映されています.「こんなスゴイ研究をどんな人がしたのだろう?」という素朴な疑問から,その人に会ってはじめて性別や国籍が分かり,バックグランドや人柄を知り,その研究に対する理解が一層深まったという経験をお持ちの方は多いと思います.個性は生まれつき備わっている先天的要素と環境によって育つ後天的要素からなると聞きます.成人の個性は後天的要素が大部分を占めているように思いますが,ある年齢を超えると固定化してしまうようにも感じます.仕事を進める上で,多様な個性を一様に尊重するのは至難の業と言っても過言ではないでしょう.
「自己組織化」現象は,最先端の解析技術を駆使することにより,化学や物理学に基づいて整然と理解されるようになりました.イオン,分子,クラスター,ナノ粒子のように構成単位は様々です.そのサイズや形の分布が重要因子となって秩序を導き,結果として高次の階層構造が跳躍的な機能を発現することが注目されています.多様性と秩序の両立は,組織の機能を最大限に発揮するためにも,組織自体が持続的に発展するためにも,大切な視点であると痛感しています.
  次は,今井宏明さんにバトンをお渡しします.
 

 (産業技術総合研究所 加藤 一実) 

セラミックス誌
2018年1月号掲載
(No.5)

 本欄の第5回目の担当としてバトンを渡されましたので「女性研究者の昇進」について述べてみます.第3回目の安盛 敦雄先生は東京理科大学材料系学科に所属する女子学生の割合を分野別に調べられています.そこで私は女性のプロの研究者について述べてみます.
  日本の女性の研究者は2016年で約14万人で研究者全体の16%を示しており,年々増加しています.しかしロシア(40%),英国(37%),イタリア(36%),米国(34%)に比べると半分以下です.これらの女性研究者は果たして指導的な地位についているのでしょうか?
 JSTの該当する約1万2千人の研究者データベースをもとに文科省の藤原綾乃さんが教授昇進について興味深いデータを出しています.教授昇進の条件は論文や書籍の多さ,引用件数の多さ,受賞,競争的資金の獲得の多さや外国との共同研究などが評価されるといわれています.女性は男性と比べ,ほかの条件は同じでも理工系は50%,医学・生物学で29%,人文社会学で19%と低かったという残念な結果が得られています.これらをもう少し掘り下げて調査しセラ誌3月号で述べてみます.
  次は,加藤一実さんにバトンをお渡しします.
 

 (日本セラミックス協会会長 平尾 一之) 

セラミックス誌
2017年10月号掲載
(No.4)

 私の所属する村田製作所はセラミック電子部品を主力とした部品メーカーです.海外売上比率は90%以上と高く,グローバルに事業展開しています.海外にも生産拠点を持ち,主要ビジネスである通信市場だけでなく,M&Aを活用して事業展開を行っています.
  様々なバックグラウンドを持つ社員が働いており,「多様性(ダイバーシティ)」をお互いに「受容(インクルージョン)」してイノベーションを生み出し企業成長につなげようと,D&Iの活動を推進しています.
 このような取り組みでは,マネジメント側には「多様な人材が働きやすい環境・制度充実」が期待されます.
 その中で私自身がこの活動に対してどのように取り組むべきか,難しく感じていました.そこで先ず,次の2つを心がけることにしました.1つ目は,自分と異なる意見を否定しない事.活動名の通り,否定から入ってはイノベーションを生み出せません.2つ目は,組織での自分の役割を意識する事.自分が何を提供できるか考えながら業務にあたり,組織の成果に貢献したいと考えています. 正解は分かりませんが,これからも自分で出来る事を考えていこうと思います.
  次は,平尾一之さんにバトンをお渡しします.
 

 (株式会社村田製作所 福盛 愛) 

セラミックス誌
2017年7月号掲載
(No.3)

 指導的な地位に占める女性の割合の目標を表す「202030」が決まってから10年以上経ち,2020年まで残り3年となりました.そこで,数字を少し調べてみることにしました.私の所属する材料系学科の女子学生の割合は約20%で,大学全体でも20%を少し超える数字です.その中で,化学系は30%程度,生物系や薬学系では50%ですが,機械系や電気系は10%以下です.次に協会の会員数(2017. 3現在)をみますと,学生会員の女性比率は約17%ですから,化学系と機械・電機系の中間で,私としては何となく頷ける数字ですが,個人会員(つまり就職後)になると約5%と大幅に下がります.しかし30歳以下の若手に限ると12%に上がります.
 これらの数字が表す意味は,いろいろ考えられると思います.興味を持つ分野や得意科目はいつ決まるのか,それらは将来の就職先を考えた結果なのか,社会制度や文化は変わりつつあるのか,等々.もちろんダイバーシティの意味は男女比だけではありませんが,この辺りをみんなで考えていくと,多様な価値観が尊重される社会に繋がっていくのではないかと思っています.
  次は,福盛愛さんにバトンをお渡しします.
 

 (東京理科大学 安盛 敦雄) 

セラミックス誌
2017年4月号掲載
(No.2)

 本欄の第2回目の担当としてバトンを渡されたものの,自分の生活においてあまり男女ということを意識しているわけではありません.私自身の話をすると,独身期間も比較的長く,子供も年をとってから産みましたので,自由に研究し,人と交流することに多くの時間を費やすことが出来ました.それが研究の幅を広げることにつながっているように思います.一方,現在は子供(3歳)の育児に追われる日々を過ごしており,ゆったりとした時間はほとんどありません.以前に比べると仕事をする時間は減りましたが,子育てを通じて多くのことを学び,我慢強くなったように思います.育児はほとんど保育園任せになっていますが,保育園の先生やお友達と過ごす時間を楽しんでたくましく育っている我が子を見ると仕事を続けることが親と子が成長する上で重要な役割を果たしてくれているように感じます.仕事を続けることは大変ですが,家族や友人,上司や研究者仲間の助けがあってこそ頑張れます.騒がしい子供を連れての学会参加などもしますが,温かい目で見守っていただけるとうれしいです. 
  次は,安盛敦雄さんにバトンをお渡しします.
 

 (物質・材料研究機構 瀬川 浩代) 

セラミックス誌
2017年1月号掲載
(No.1)

 日本セラミックス協会は,協会をより活性化するために,2014年に男女共同参画委員会を発足させ,新しいイベントを企画・実行してきました.今回は,皆様と「ダイバーシティ」について考える機会となりますよう,日頃思っていること,悩んでいること,仕事と家庭の両立,育児や介護,グローバル化など,約500文字で思いを書いて,次の著者にバトンリレーしていきます.
  日本のジェンダーギャップ(男女平等)指数は,145ヵ国中101位(2015年)です.1位アイスランドで,ノルウエー,フィンランド,スウエーデンと北欧が上位を占めています.2016年9月にフィンランドのオウル大学を訪問し,研究者・技術者ら13人と交流をする機会を頂きました.効率の良い仕事と短時間労働を推奨し,これにより,帰宅後でも家事,育児,趣味を家族で楽しむ時間がたっぷりとあり,男性も自然に家事や育児を分担していました.残業をしなくても平均給与が比較的高く,社会保障が充実しており,時間が豊かで,自然が豊かで,人生をゆっくり楽しんでいるようでした.素敵な国にうらやましさを感じ,日本の長時間労働社会を憂いている,今日この頃です.
  次は、瀬川浩代さんにバトンをお渡しします.
 

 (男女共同参画委員長 中野 裕美)