緊急特別講演“フォトニックフラクタルによる電磁波の閉じ込め”

宮本欽生

講演者:大阪大学 接合科学研究所
スマートプロセス研究センター 宮本欽生教授

日時:2004年3月23日(火) 15:30〜16:40

場所:L会場(4号館4401)


大阪大学 接合科学研究所 ○宮本欽生、桐原聡秀
信州大学 理学部 武田三男、本田勝也
物質・材料研究機構 迫田和彰

 我々は昨年3月に、3次元形状をした誘電体フラクタルが、入射した数GHzから百GHzの電磁波を反射も透過も殆どせずに内部に閉じ込めることを発見し、このようなフラクタルをフォトニックフラクタルと命名した。実験に用いたフラクタルは、メンジャースポンジ型という大小多数の方形孔があいた3次元立方形状をしており、CAD/CAM システムの光造形法で製造されている。材料はエポキシや酸化チタン等の高誘電率セラミックスである。
 フォトニックフラクタルの最も大きな特徴は、自己相似性、すなわち拡大・縮小操作に対して構造パターンが不変である対称性が、電磁波をその波長よりも小さい領域に閉じ込めてしまうことにある。このような電磁波の完全閉じ込めは、並進対称性を有することで特徴付けられる周期構造でのブラッグ反射に起因した、フォトニック結晶の電磁波局在等とは本質的に異なる。
 フォトニックフラクタルにはスケーリング則が成り立つため、光を含む広い波長域にわたるさまざまな応用、例えば無反射完全吸収材、高性能アンテナやフィルター、センサー、新たな非線形光学素子、光コンピュータの演算回路素子、電磁波や光エネルギーの一時貯蔵、高効率加熱等々が期待できる。また、これまで応用に結びつき難かったフラクタル科学やカオス理論を精密科学と技術に結びつける糸口にもなり得る。
 本講演では、フォトニックフラクタルの発見に至った経緯、電磁波閉じ込めに関し得られているさまざまな特性と機構、応用とあわせ、結晶学を基礎としたこれまでの材料科学技術に加え、新しいフラクタル科学技術の構築がブレークスルーをもたらす可能性について紹介したい。

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