平成26年度見学会(参加報告)

平成26年度日本セラミックス協会関東支部 見学会

日本大学大学院理工学研究科物質応用化学専攻 M1 宮内 將人

 平成26年11月28日金曜日に日本セラミックス協会関東支部主催の平成26年度見学会が行われました.今回の見学先は,埼玉県蕨市にあるリンテック株式会社(研究所)とさいたま市にある株式会社住田光学ガラス(本社,工場)の2か所の見学をさせていただきました.本年度の参加者は18名(内,学生14名)でした.当日は,快晴であり,朝の9時40分にJR蕨駅改札口に集合し,タクシーにてリンテック株式会社の蕨研究所に向かいました.
 リンテックでは,人事部の畠中様より粘着素材や粘着関連装置,特殊紙(剥離紙,剥離フィルム),粘着加工・表面技術の分野におけるB to Bのリーディングカンパニーであることなどの会社概要の説明をしていただきました.とくに最近では,半導体の関連粘着テープや光学関連材料についての研究や,生産が伸びているとのことでした.また,リンテックの製品は我々の身近な部分や場所に用いられており,例えばスマートフォンの液晶ディスプレイや日用品などの表示ラベル等粘着素材としての幅広いところで用いられています.その中でも,自分が印象深かったのがウィンドーフィルムです.最近,電車・バスの側面や建物の窓などにキャラクターや,文字が描かれたものが増加しており,ここで用いられる粘着素材がリンテック製だと聞き,驚きました.一方,研究企画部の萩原様より研究所の構成についての説明を受け,研究所は現在3つの棟からなっており,新しい研究所を蕨に建築中とのことでした.さらに,8つの研究室があるとのことでした.また,リンテックが重要視している4つのコア(貼る,機能性,装置,用紙・台紙)を融合した研究・開発を行っていました.
 リンテックの会社説明が終了した後,「企業の研究はどのようなことを行っているのだろう?」とワクワクしながら,2つのグループに別れ大きな研究所内の見学が始まりました.研究所内は,学校の研究棟のようにたくさんの部屋がありました.それぞれ,研究室や共同実験室,クリーンルームなどの研究に必要な部屋がずらりと並んでいました.また,共通実験装置は走査型電子顕微鏡やX線光電子分光測定装置,赤外線吸収スペクトル,ガスクロマトグラフィー等のなじみのある解析装置多く見られました.自分は,実験スペースが研究室ごとに割り振られていないところに共感を覚えつつ1時間ほどで見学が終了しました.
 その後,昼食をとりつつ就職についての雑談や見学会の質問等をしてリンテック株式会社の見学が終了となり,研究所を出た先で恒例となっている記念写真を撮りました.再びタクシーに乗り,JR南浦和駅に向かいました.そこから,JR与野駅で下車し,歩いて5分ほどの場所に2つ目の見学場所となる株式会社住田光学ガラスを訪問しました. はじめに,社長の住田様より会社の歴史や会社の理念である「自由に 自在に しなやかに」の説明をうかがいました.その中で,住田様は「養鶏場の鶏のようになっては未来がない.これからは,独自の発想で新しいものを生み出し続ける必要がある.」ということを熱心におっしゃており,これから会社で働くには必要なことだと認識できました.・その後,取締役の沢登様から会社概要とともに,1時間程度ガラスに関するご講演をしていただき,住田光学ガラスはレンズやプリズム,光ファイバーなどに使用される光学レンズの製造を主に行っている会社であることが分かりました.とくに,光学ガラス,光ファイバー,機能性ガラスの3つに重点をおいて製造・研究を行っており,光学ガラス分野では高浸透率,低膨張,光ファイバー分野では,極細径φ1.8 mm以下,よく曲がる,機能性ガラス分野では,紫外線の可視化など他の企業ができないことを成功していました.
 説明終了後,再び2班に分かれて研究所・工場の見学と製品体験をさせていただきました.研究所と工場の見学では,山本様に案内をしていただきました.配合室には自分たちが普段用いないような試薬から普段よく見る試薬までそろっていました.このとき,配合させる試料量をわずかに変化させることで,偏光率やアッベ数が変化するそうです.つぎに,試料を溶解させるための実験室には十数台の高温炉があり,ここでガラスを溶解させているとのことでした.また,十数台の高温炉ですが,すべて手作りと聞き驚きました.一方,合成したガラスを解析する部屋には,X線回折装置,走査型電子顕微鏡,X線光電子分光測定装置,熱分析等がそろっていました.研究所見学のつぎに,工場を見学させていただきました.工場では,製造工程を見ることができないのが残念でしたが,30〜40 m程度の長さのガラスを製造後,短い長さに切断し,出荷をしているとのことでした.また,近くに製品の検査所があり,ガラス表面のわずかなキズ,汚れ,ゆがみ等を1つずつ目視にてチェックを行っていました.
 一方,製品の体験を沢登様,山竒様に行っていただきました.ガラスにテルビウムを添加することで常磁性を持たせたガラス,暗所でも長く光り続けるガラス,YAGレーザーを照射することで,アップコンバージョンを利用することで可視化できるガラスなど多くの機能性ガラスを体験させていただきました.また,光学ガラスではファイバー径がφ1.8 mmの光ファイバーをのぞかせてもらいましたが,はっきりと小さい文字が見え感動しました.
 今回の見学会を通して,狭い視野で研究・開発するのではなく,幅広い視野や独自の発想から顧客のニーズに合ったものづくりをすることも大事ですが,製品に高付加価値を付与させたものづくりもこれから重要になってくるように感じました.
 最後となりますが,貴重な体験をさせて頂き,お世話になりましたリンテック株式会社および住田光学ガラス株式会社の担当者の皆様に対して深く御礼申し上げます.

平成26年度見学会(写真)



平成26年度見学会 参加者募集

終了しました

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成26年11月28日(金)

見学先:リンテック株式会社,株式会社住田光学ガラス

募集人数:20名

応募方法:下記メールアドレスにお申し込みください.
日本大学理工学部物質応用化学科 小嶋芳行
kojima.yoshiyuki@nihon-u.ac.jp
お申込みの際には,氏名,所属をお知らせください.

参加費:2000円(昼食,移動費を含みます)

当日のスケジュール(案)
9時40分 JR京浜東北線蕨駅集合 
9時55分 リンテック褐、究所着
10時 工場見学開始(会社説明,見学)
12時 工場見学終了
12時〜12時40分 昼食
12時45分 移動 JR京浜東北線南浦和駅
13時40分 住田光学ガラス樺
13時45分 工場見学開始(会社説明,見学,講演)
15時45分 工場見学終了

会社説明
 リンテック株式会社は,粘着素材,粘着関連機器,特殊紙および剥離フィルムなどの研究・製造・販売を行っております.とくに,粘着素材の分野におけるリーディングカンパニーであり,その製品のラインアップは非常に多岐にわたっています.当日はダイシングテープやラベル、シール等の粘着素材開発現場を見学させていただきます.
 世界有数の光学 機器生産国である日本において,株式会社住田光学ガラスはこの分野における数少ないエキスパート企業として光とガラスの世界に取り組んでいます.独自のガラス光ファイバー技術を追求し,いち早く原材料から最終製品までの一貫生産体制を確立しました.こちらの光ファイバーは,医療,通信,計測,照明などの分 野で幅広く使用されるとともに,オプトエレクトロニクスおよび世界でその応用範囲をますます広げつつあります.今回は本社内にあります展示場 および工場を見学した後に,研究者の方から製品に関わるガラスの未来などに関する講演を拝聴する予定です.