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第42回 東海若手セラミスト懇話会
2011 年 夏期セミナー開催報告

東海若手セラミスト懇話会
日本セラミックス協会東海支部


去る6月30日(木),7月1日(金)の2日間,日本セラミックス協会東海支部東海若手セラミスト懇話会の2011年夏期セミナーが愛知県蒲郡市のホテル竹島で開催されました.今回は104名(講師:4名,一般:33名,学生:67名)の参加者を集め,招待講演2件,若手セラミスト基金による国際セッション1件,テーブルディスカッション58件(企業紹介1件,一般9件,学生48件),学位論文紹介1件,海外報告1件の発表が行われました.以下,進行順に内容を報告いたします.


1日目: 定刻通り産業技術総合研究所の鈴木一行運営委員代表から,活発な議論と積極的な情報交換を行っていただくよう挨拶があり、会が始まりました.

引き続き招待講演1として,豊橋技術科学大学の武藤浩行先生より「複合材料のナノ空間デザイン」と題してお話をいただきました.(→写真 1)様々な形状やサイズの粒子の表面電荷を制御することで、液相中で静電気力により自在に複合粒子を作製し、さらにそれを焼結やホットプレスなどにより、微構造が精密にデザインされたナノ・マイクロ複合材料の創生を行う手法に関するご講演でした。微構造を精密に制御することで、使用する部材や量を変えることなく、様々な特性を改善させることができるというもので,後半には、具体的に電気伝導や熱伝導率、また力学特性が大きく改善された複合材料の例をご紹介いただきました。先生の分かりやすい話を聞いて,この手法をよく理解し、興味を持たれた学生さんも多かったのではないでしょうか.

その後、テーブルディスカッションのアピーリングタイム第1部が,引き続き行われました.(→写真 2)夜に行われるテーブルディスカッションのアピールを一人30秒の持ち時間で1枚のスライドを使って行ってもらいました.限られた時間の中で工夫を凝らした懸命なアピールが多く見られました.

招待講演2では,大阪大学の阿部浩也先生から「ナノ粒子インクの直接描画と機能性流体化」というタイトルでお話をいただきました.全体を通じて、コロイド分散系に外場を加えることでレオロジーを制御するご研究を、現象だけでなく、数式を交えて丁寧にご紹介して頂きました。特に前半はマイクロノズルとX-Y-Z移動ステージを用いたゲルの射出による直接マイクロ描画のお話をして頂きました。これは、物理的な力が加わることでゾルーゲル変態するコロイドと、インクジェットの原理を利用して、マイクロ構造を作成できるという内容でした。後半は、磁気粘性流体に関するご研究をご紹介頂きました。実際の応用例として、下肢装具への展開や、ブレーキングシステムへの適用例を、動画を交えてお話して頂きました。現象から理論的な解釈、実用例まで通してご紹介頂けたことで、多くの若手研究者や学生さんが興味深く聴講・勉強できました。

テーブルディスカッションのアピーリングタイム第2部が,招待講演2の後に第1部と同様に行われました.

夕食を兼ねた意見交換会は,宴会場で行われました.至る所で会話に花が咲き交流の輪ができていました.非常に盛り上がり中締めの挨拶があった後も,多くの人が宴会場に残りテーブルディスカッションが始まる直前まで意見交換・交流が続いていました.

テーブルディスカッションは58件の発表を4グループに分け,コアタイムを設定する形で進められました.このテーブルディスカッションとは,本会では恒例となっているポスターセッションの変形版で,発表資料をテーブル上に並べて発表する形式です.ポスターを持参する人や実際のサンプルを持ち込んで実演する人もいて、創意工夫が見られました。アルコールを飲みながらの議論であったことも手伝って会場はものすごい熱気で,至る所で質問が飛び交っていました.熱心な討論がコアタイムを超えても続けられ、22時30分過ぎに終了しました.なお,参加者全員の投票により選ばれた優秀な発表に対して,最優秀発表賞(1件),優秀発表賞(5件)が贈られました.受賞者氏名,所属と発表題目は,本報告の最後に記した通りです.熱心な議論や交流は場所を移して催された二次会の会場でも朝3時過ぎまで続けられ、それでも議論し足りない人は、その後も会場の外で日が昇るまで議論を続けました.


2日目: 若手セラミスト基金国際セッションとして,Korea Institute of Materials ScienceのHui-Suk Yun先生による「Mesoporous Bioactive Ceramics for Tissue Regeneration」と題したご講演を行っていただきました.冒頭で,先生の現在のご所属であるKorea Institute of Materials Scienceの紹介をしていただきました.略語がKIMSであり、日本のNIMSと似ていますが、行われている研究の内容も大体同じであるとのご紹介でした。続いて、メソポーラス材料を用いた生体・組織再生工学のご研究を紹介していただきました。前半は対象が主に学生さんであることにご配慮いただき、メソポーラス材料から生体組織・再生工学の基礎を丁寧にご講演頂きました。後半は再生工学の現状や最新の研究成果を交えたより具体的なお話を頂きました。骨折した骨の生体再生現象などを効果的にアシストする材料に関して、メソポーラス構造の多孔性を利用した大変興味深いお話をして頂きました。二日目の朝ということでしたが、学生を含め聴講者の興味を引くご講演をして頂けたため、真剣に話に聞き入る学生の様子が見られ、活発な質疑応答につながりました。 (→写真 3

今回も招待講演,国際セッションの講演に対する学生の質問の中から各講演につき1件ずつ,ベスト質問賞が贈られました.これは,学生が積極的に講演に対して質問をすることを促すために考えられた賞で,ご講演いただいた先生に選考していただいております.今年で7年目となりますが,非常に多くの学生が積極的に質問に立つようになり,明らかに議論の活性化につながっていると思われます.今回の受賞者の氏名と所属は,本報告の最後に記した通りです.

学位論文紹介ではファインセラミックスセンターの木下久美子先生が「遷移金属化合物単結晶モデル触媒の表面構造決定」というタイトルで,触媒材料の表面をSTMなどにより原子レベルで評価することにより、経験則や統計的な解釈を主としている触媒材料の評価についてより高度な研究に発展させている例をご紹介頂きました。将来の学位取得に向けて刺激を受けた学生さんも多かったのではないでしょうか.

次に海外報告として,産業総合研究所の山口十志明先生より,アメリカのColorado School of Minesに滞在された際の研究活動,生活について報告していただきました.アメリカに住んで研究したことにより直接肌で感じることができたアメリカの研究スタイルをはじめ,文化や歴史,気候に至るまで幅広くお話し頂きました。学生さんにとってはなかなか聞けない貴重なお話になったことと思います.

最後に,テーブルディスカッション優秀発表賞とベスト質問賞の発表と表彰を行いました.最優秀発表賞を受賞した名古屋大学の石田兼基君には,鈴木代表が購入された開催地の蒲郡に関連した前向きになれるカレンダーが贈られ,このカレンダーに託した代表の思いが熱く語られました.(→写真 4)最後に秋期講演会での再会を約束し,閉会しました.

例年本セミナーでは,カジュアルなスタイルでの参加を呼びかけており,今回もそのリラックスした雰囲気の中で活発な討論が行われました.また,合宿形式ということもあり,夜遅くまで研究のことだけでなく様々なことを語り合い,東海地区の若手が親睦を深める良い機会となりました.この場をお借りして,次回にもより多くの方々のご参加をいただけますよう,ご案内する次第です.

なお、本セミナーの詳細は、東海若手セラミスト懇話会の公式 Web サイトである http://www.atyc.org/ でも紹介しております。


優秀発表賞受賞者(敬称略)

最優秀発表賞
石田 兼基 名古屋大学 「生体への応用を目指した脂質膜修飾アップコンバージョン蛍光ナノ粒子の合成」
優秀発表賞
大橋 敬之 名古屋工業大学 「(LiNa)NbO3 系非鉛圧電セラミックスの圧電特性と分極反転」
野々山 貴行 名古屋工業大学 「ペプチドを用いたチタンバイオミネラリゼーションとその特性評価」
Chunxi Hai 名古屋工業大学 「Insight on the effects of multi-walled carbon nanotubes in electrically conductive porous alumina」
村井 一喜 中部大学 「ナノ空間を利用した酵素―メソポーラスカーボン触媒の開発とバイオ燃料電池への応用」
松原 康成 豊橋技術科学大学 「単層CNT添加複合材料の組織制御」

ベスト質問賞受賞者(敬称略)

高橋 圭太 三重大学
江崎 拓真 豊橋技術科学大学
野々山 貴行 名古屋工業大学

written by 河村 剛(豊橋技術科学大学)


写真

invited lecture
写真1 招待講演(武藤先生)
table discussion
写真2 アピーリングタイム
present
写真3 質疑応答(Yun 先生)
present
写真4 最優秀発表賞表彰

開催案内を見る
若セラ2010秋期講演会報告] ← → [若セラ2011秋期講演会報告
平成23年度事業

2011年9月16日 公開
2012年8月24日 更新
2014年11月19日 更新