この度,日本セラミックス協会エンジニアリングセラミックス部会の部会長を拝命しました一般財団法人ファインセラミックスセンターの北岡諭です.TOTO(株)の清原様の後任を務めさせて頂きます.皆様のご支援とご協力を賜りながら、エンジニアリングセラミックス分野の発展に貢献してまいりたいと存じます.
私たちが目指すべき大きな目標として,2050年のカーボンニュートラルの実現があります.気候変動の問題がますます深刻化する中で,セラミックスが持つ多様な機能を最大限に生かし,持続可能な社会の構築に向けた取り組みが求められています.ご存じのように,エンジニアリングセラミックスは、航空機エンジンや火力発電用タービン、パワーデバイス基板、半導体製造装置,耐火物等、過酷環境下において高度な信頼性が要求される分野で使用されてきました.最近では,新型コロナ感染症の5類移行に伴い,ようやく社会が以前の状況に戻りつつある中で,カーボンニュートラルの実現に資するべく,エンジニアリングセラミックスの重要性はますます高まっており,さらなる性能の向上と適用範囲の拡大が求められております.また,再生可能エネルギー由来の水素やアンモニア等のクリーン燃料の燃焼を利用した火力発電,航空機エンジン,工業炉等のシステム開発も進行しています.この大きな変化は,燃焼ガスに曝されるセラミックス部材の耐久性に大きな影響を与えるものと予想されますが,それに対する対策や材料開発は緒に就いたばかりです.さらに,エネルギー安定供給やクリーンエネルギーの確保に向けて,軽水炉の安全性向上や核融合炉開発にも世界レベルで注目が集まっております.
これらの研究開発を支える共通基盤技術も重要です.例えば,電子・ナノレベル構造/機能解析,プロセス/実使用環境下でのオペランド観測技術,理論・データ駆動に基づく材料プロセス設計、構造と機能のトランススケール制御技術等のさらなる高度化も必要となります.また,超省エネの製造プロセスや外場利用による環境負荷の低減、さらにはハイエントロピー材料の開発など、革新的な取り組みも期待されております.
エンジニアリングセラミックスを取り巻く環境が大きく変化する中で,このような学際的な課題を解決し発展していくためには,様々な分野の研究者・技術者との連携を強化し,知識と情報の共有を図ることが重要です.私たちの部会は,そのような連携と共有の場として,皆様方のお役に立つ存在でありたいと考えております.
最後になりますが,エンジニアリングセラミックスの分野において,さらなる発展を遂げるためには,多様な意見や知見を持つメンバーの協力が欠かせません.皆様の経験と専門知識を活かし,共に努力して新たな成果を創出しましょう.これから2年間、本部会長として皆様と共に未来を拓いていくことを心から楽しみにしております,どうぞよろしくお願い申し上げます.
これからの時代のエンジニアリングセラミックス
エンジニアリングセラミックスは、環境・エネルギー、輸送関連、航空宇宙、製造・生産技術などのさまざまな過酷な条件下で使用される重要な材料です。「安全・安心」な社会に貢献するエンジニアリングセラミックスの信頼性向上を目指して、理論・計算・データに基づく材料設計、繊維強化・粒子分散による複合化技術、低環境負荷プロセスや3D造形などの製造プロセス革新、先進セラミックスコーティング技術などの研究開発が進展し、航空機ジェットエンジン部材、ガスタービン部材、半導体製造装置部品などへの適用・実用化が進められています。
部会のミッション
エンジニアリングセラミックス部会は、産・官・学の連携の下に、これからの時代に求められるエンジニアリングセラミックスの研究開発に資するよう、先進セラミックス材料科学を基礎から応用まで極めることを目指し、活動を進めています。
主な活動
定例の活動に、年会・秋季シンポジウムにおける関連セッションおよび特別講演、エンジニアリングセラミックスセミナーの開催などがあります。これら以外に、エンジニアリングセラミックスに関する国際会議の開催や、米国セラミックス学会エンジニアリングセラミックス部会との交流なども活発に行っています。
部会の主張
エンジニアリングセラミックスは、高強度、高剛性、耐摩耗性などの機械的特性を利用した、自動車・航空宇宙・エネルギー分野の高温部材、工具・メカニカルシール・ベアリングなどの耐摩耗部材への適用から出発しました。近年では、その他の特性と組み合わせた半導体製造装置部品、各種環境におけるフィルター部材などへ広がり、各種製造業におけるキーマテリアルとして注目されています。今後、我が国の製造業の国際競争力強化に貢献するとともに、エネルギーの高効率化、省エネ化、低環境負荷に寄与するための研究・開発・応用が素材産業全般に期待されており、エンジニアリングセラミックスもまた、新しい切り口を加えて、その解決に貢献することが求められています。当部会も産・官・学の架け橋として役割の重要性が増しており、会員一同一層の努力ができる場を提供します。
部会員の参画が活動の主体
部会に多様な意見を取りこみ、業種・職種・年齢に関わらず、幅広い領域をカバーできる部会運営を目指します。ぜひ、数多くの皆様のご参加とご協力をお願いいたします。