1994年 学術部門 銀賞
周期的なすべりによるSiCの3C→6Hへの相転移
写真の説明:
(200)面をもつβ‐SiC単結晶を2300℃、1時間熱処理して一部を
α‐SiCへ相転移させた試料の高分解能電子顕微鏡写真である。
β‐SiCに発生した2/3a[−211]転位は、<−110>軸方向における
(111)積層面のa/3すべりとして観察された。(aは
SiC4またはCSi4
正四面体底面の原子間距離2.52Åである。)2/3a[−211]の転位は
エネルギー的に安定な2/3a[−101]と2/3a[−110]の部分転位として
分離し、2/3a[−101]部分転位は[−101]方向と60゜の角度を成す
<−110>軸方向で、7〜8個の原子配列にわたるa/3のすべりとして
あらわれた。ある層の2/3a[−211]転位とそれと連続する層の
2/3a[−211]+2/3a[−211]転位によってβ‐SiCはすべり面を
中心に双晶を形成する。これがSiCの3C→6Hへの相転移の主たるメカニズム
である。これらの転位は周期的に発生し、また可逆的に生成と消滅
(±2/3a[−211]転位)を繰り返して、結晶外部の大きな変化を起こさず
3C→6Hへの相転移が進行する。
学術的な意義:
これまでSiCの相転移現象に関して様々なメカニズムか提案されてきたが、実験的
証拠の不足で今一つ解明されていない状況である。積層欠陥密度、不純物の濃度、
出発物質の形状などがSiCの相転移に密接な関係を持つので、相転移メカニズムの
解明には注意深い実験が必要になる。相転移に及ぼす因子の影響が無視できる
β‐SiC単結晶を出発原料として相転移させた試料の高分解能電顕観察は、
これまで論争が続いてきた相転移メカニズムに決着をつけることになった。
相転移させた結晶を粉砕しTEM用試料とした。イオンエッチングを
掛けなくても比較的広い範囲の格子像の観察ができた。
装置、撮影条件等:
透過型電子顕微鏡(JE0L2010)、加速電圧200KV、直接観察倍率80万倍
出品者所属・氏名:
名古屋大学工学部 徐元善、河本邦仁
撮影者氏名:
名古屋大学工学部 徐元善
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