1994年 学術部門 銀賞

窒化アルミニウム薄膜の初期腐食過程に観察される樹枝状パターン

写真の説明:
窒化アルミニウムは水酸化ナトリウムにより腐食されることはよく知られているが、 窒化アルミニウム薄膜に対する腐食、特に初期腐食過程はあまり研究されていない。 そこで、イオンビームアシスト法を用いて窒化アルミニウム薄膜をシリコン単結晶上に 約100nm合成し、pH11の水酸化ナトリウム水溶液により短時間腐食した。 純水洗浄後、直ちに表面を原子間力顕微鏡で観察すると、腐食は樹枝状バターンを 形成して進行することが分かった。30μm像の円で示した部分を拡大した4μm 像より、樹枝状パターン先端部分の「指」の大きさは幅約500nm、高さ約30nm であった。4μm像の円で示した部分を拡大した像より、樹枝状パターン以外の 平滑な部分には粒状の窒化アルミニウムの結晶子が観察された。樹枝状パターン部分は 窒化アルミニウムと水酸化ナトリウム水溶液が反応して生成された水酸化アルミニウム と考えられる。

学術的な意義:
今まで、腐食による表面形状の変化は光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて 行われていた。しかし、原子間力顕微鏡は空間分解能が格段に優れているために 光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡では観察できなかった初期腐食過程の形状変化を ナノメートルスケールで観察することが可能である。30μm像より、腐食は きわめて狭い領域で起こり始め(腐食核発生)、樹枝状に全方位方向に拡大していく ことがわかる。樹枝状パターンは結晶成長過程に観察されそのフラクタル性の 起源について議論されているが、腐食過程にも同様にフラクタル性があると 考えられる。

装置、撮影条件等:
原子間力顕微鏡(ナノスコープIII、デジタルインスツルメント)、 タッピングモード、シリコン単結晶探針使用

出品者所属・氏名:
防衛大学校材科物性工学教室 渡追芳久、中村義一

撮影者氏名:
防衛大学校材科物性工学教室 渡追芳久

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