平成18年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部見学会の参加後記

茨城大学理工学研究科 万徳 則恵

 平成18年11月24日(金)に関東支部の会社見学会が開催されました.見学先として,(株)ディスコ本社(大田区)と(株)YAKIN川崎を訪問させていただきました.
朝9時30分にJR京浜東北線大森駅に17名(内,学生7名)が集合し,徒歩5分の場所にあるディスコ本社に向かいました.
ディスコは,「切る・削る・磨く」に特化した企業で,事業内容は,シリコンウェーハ,セラミックス,ガラスなどの材料を「切る・削る・磨く」ための装置および砥石の,開発・製造・販売・メンテナンス・リサイクルを行っています.この企業の装置と砥石技術により,髪の毛の断面を22分割に加工できます.髪の毛の太さがおよそ5マイクロメートル,そこに,5×7本の砥石の加工線が入っているのですから写真を見たときは圧倒されました.事業は,ディスコで一貫して行っており,製造工場を除いた全ての部署が本社ビルにあります.これらの体系は,半導体や電子部品などの高集積化・高性能化に伴う,材料の高い精密加工技術のニーズに素早く対応するためとのことでした.
人財部の大崎茂彦チームリーダーに会社概要についてご説明いただいた後,3班に分かれてビル内にある,アプリケーションラボ,ソフト開発室,装置の試作フロア,社員が就業時間内であっても自由に使用できるジム,晴れた日には富士山が一望できる食堂の見学を行いました.8階建てのビルの外観からでは,とても想像できない設備ばかりでした.
アプリケーションラボは,完全個室で加工実験のできる35室のことを指します.顧客の要望に添って,装置の加工パラメータと約3000種類の砥石から最適加工条件出しを無償で行っています.個室である理由は,プライバシーの保護のためです.見学では,パネルを使用して装置や刃物の説明して頂きました.また,実際に稼働している装置や100ミクロンの厚さに仕上がった30センチ径のシリコンウェーハも見せて頂きました.稼働中の装置は非常に静かでした.
人財部の方々と懇談をしながら昼食を取りました.緊張することなく,有意義な時間を過ごしました.お土産にフラッシュメモリーと製品サンプルの砥石を頂きました.
次に,私鉄京浜(大師線)で小島新田駅まで移動し,YAKIN川崎を訪問しました.
YAKIN川崎は,ステンレス特殊鋼メーカーとして飛躍する日本冶金工業グループ(3社)の中の一社で,高級ステンレス鋼,高機能材,ステンレス特殊鋼の開発,製造を行っている企業です.溶解精錬から連続鋳造,熱間圧延,冷間圧延等の設備が常に稼働しており,ほぼ全ての合金が連続鋳造で製造されています.セラミックスとの関連は,溶綱を移動する為の容器の内側にありました.容器はおよそ34m3あり,精錬による通電加熱や連続鋳造機への出湯に使用します.溶鋼温度が1550〜1650℃であることから,容器の内壁にMgO-Cを材質とする耐熱性セラミックスレンガを組み立てて使用していました.組成の異なる特殊鋼やステンレス鋼を製造する場合は,5日間容器を冷却した後,レンガを崩し,また,レンガを組み立て直す必要があります.セラミックスレンガを崩さずに容器を使用すると,溶鋼がレンガに付着していることからコンタミネーションが含まれてしまうので組み立て直します.
大田富貴製造部長に会社概要についてご説明いただいた後,12.6万坪もある工場敷地をバスで移動し,製鋼工場,熱延工場,薄板工場の見学を行いました.環境に配慮し,工場内部から排出される煤塵は外部に漏らさないよう工夫されていました.製鋼工場では,溶解精錬,連続鋳造の作業を見学しました.大田製造部長による各装置や作業についての詳細な説明を参加者の皆さんは熱心に聞いておりました.容器のセラミックスレンガの崩し作業の様子も見学させて頂きましたが,手作業であるためとても骨の折れる作業だと感じました.
工場見学終了後,大田製造部長とディスカッションを行いました.やはり興味は,セラミックスレンガに集まりました.一度容器に組み立てるのに使用するレンガの量は,数万個で,使用済みのレンガは産廃となるというお話をお聞きしました.耐熱性セラミックスの新技術の必要性を感じます.お土産に,ステンレス鋼で加工したスプーン・フォークの10本セットを頂きました.
私鉄京浜川崎駅にて18時頃解散となりました.
私事の感想ですが,今回の見学会では,セラミックス材料は私たちの生活には欠かせない商品であると改めて実感致しました.また,セラミックスとの関わりも企業体系も異なる2社を見学できたこと,参加者の方と短い時間ではありましたが対話ができたことは自分の将来を考える上で良い経験となりました.学会開催日と見学会の開催時期が近かったためか学生の参加者が少なかったのが残念でしたが,非常に楽しい見学会なので次回の参加人数が増えることを期待しております.
最後に,ディスコとYAKIN川崎の2社を訪問先として選んでいただき,素敵な方々に出会う機会を与えて下さいました岡田先生に,この場をお借りして厚くお礼を申し上げます.

平成18年度見学会(写真)



平成18年度見学会(募集要項)

日本セラミックス協会関東支部では学生成いは若い人向けように「会社見学Jを企画致 しました。本年度は多摩川 を挟 んだ東京都大 田区と神奈川県川崎市 にあ ります株式会社デイスコ(DISCO)お よび株式会社 YAKINり |1崎 (日 本冶金工業グループ)の会社見学を致します。株式会社デイスコ (DISCO)(〒 143・ 858o 東京都大田区大森北 2-13‐ 11)(資 本金約 98億 9千万円)は、材料を切る、削る、磨 くをベースとした企業で、 1)精密研削切断装置の製造とメンテナンス、 2)精密研削切断装置のオペ レ‐ションと解体 リサイクル事業、3)精密ダイヤモン ド砥石の製造、4)加工技術の有償提供など精密研削切断を行つている一部上場の大手企業です。また、日本冶金工業グループの株式会社 YAKIN川崎 (〒 210‐8558 神奈川県川崎市川崎レ ト島町 4番2号)(資本金 16億円)は、高級ステンレス、高機能材であるFe‐ Ni合金、高 Ni合金などのステンレス特殊鋼をベースとした製造加工を行つている企業です。特に YAKINり :1崎は溶解精錬から連続鋳造、熱間圧延、冷間圧延などによって製造させた特殊ステンレス鋼などの製造を行つている企業で、1)デスプレイ分野を含めた電子部品 。精密機械材部品の製造、2)排煙脱硫装置、大気汚染公害防止機器 として、火力発電所に付帯する設備 、3)食品プラン ト、エネルギーや海洋構造物用としての機器、4)家庭流し台、NASメ タルハニカムの触媒担体など多くのステンレスを開発製造 している大手企業です。それらの会社を見学させてもらうことになりました。是非ともご参加下さいますようにお願い致します。

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成18年11月24日(金)

見学先および見学内容:
9:30 JR大森駅中央改札口集合
10:00 株式会社デイスコ (DISCO) 見学
12:30 昼食
13:30 株式会社 YAKIN川 崎 見学
16:50 見学会終了
17:00 私鉄 京浜 (大師線)Jヽ 田新田駅 解散

集合:9時30分 JR大森駅中央改札口集合

参加費:1,500円

募集人数:20名程度

申し込み方法:
氏名、勤務先、役職名、Fax番号、E-mailアドレスをご記入のうえ、E-mailあるいはFaxにて下記宛に申込み下さい。学生の場合には大学院・学部の別と学年を明記して下さい。参加費の支払いや集合場所などについての詳細は参加申込み後に、連絡先に送付いたします。

締切:平成18年11月16日(木)

申し込み先:
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
国士舘大学理工学部理工学科 岡田 繁
E-mail: sokada@kokushikan.ac.jp
Tel 03-5481-3292 Fax 03-5481-3292