平成19年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部見学会の参加後記

日本大学大学院理工学研究科 物質応用化学専攻1 年 中島 啓之

 平成 19 年11 月16 日(金)に日本セラミックス協会関東支部の見学会が開催されました.
本年の参加者は15 名(内,学生7 名)であり,(株)富士通研究所と(株)東罐興業を見学させていただきました.朝9 時30 分に小田急線愛甲石田駅に集合し,バスで10 分の場所にある富士通研究所に向かいました.
富士通研究所は富士通グループの研究開発の中核をなす企業であり,事業内容は材料・デバイスから,ネットワーク,ITシステム,ソリューションまで一貫した研究開発に取り組んでいます.特徴としては,「いつでも,どこでも,誰とでも」自由にコミュニケーションできるような技術開発をモットーとし,人とコンピューターとの垣根を取り除こうと挑戦している企業です.その努力が大きく発揮されたものが電子ペーパーやロボティクスといった技術です.富士通が独自に開発した電子ペーパーは折り曲げることができるうえに,電源を切っても半永久的に絵が表示されたままであり,まさにわれわれが普段使用している印刷物と全く遜色がありませんでした.この電子ペーパーは電車の広告やポスターに用いられる予定だそうですが,近い将来に新聞や折り込みチラシで使えるようになれば「何度でも使える夢のような紙」になるかもしれません.ロボティクスでは二足歩行ロボット(通称HOAP,全長60cm,重さ8kg)が階段を上がったり,下りたりしている姿を見学しました.これは,プログラムされて階段を上り下りしているのではなく,自分で段差を感知し,足を付く際に荷重移動してバランスをとっているということに驚きました.特に,小柄なHOAPが相撲力士のようにしこをふんだときには,全員がその迫力に圧倒されてしまいました.
展示室での見学を終えた後は研究所のTEM 装置,LSI の歴史について説明してもらいました.銀行のスーパーコンピューターに搭載されていたというCPU ボードには100 個以上のLSI が搭載されており,ボードは40cm×40cm ほどの大きさがありました.これは現在のIntel 製Pentium やCore2Duo などといったCPU の発熱量やサイズとは比較にならないほど大きく,時代に沿ったLSI 小型化技術の進歩を垣間見ることができました.
最後は研究所の方々と一緒に懇談しながら昼食を取りました.その有意義な時間を過ごした後に,われわれは富士通研究所の入り口で記念撮影を行い,次の見学先へと向かいました.
次に,小田急線で海老名駅まで移動し,東罐興業の工場を訪問しました.
東罐興業は,紙と樹脂を素材としている容器メーカーであり,紙コップのシェア 50%以上を誇るトップメーカーです.容器から容器を作る機械まで全て自社で研究・開発・設計するという一貫性や,環境を配慮した容器作りに取り組んでいる姿勢に大きく感銘を受けました.
工場では,われわれが普段目にしているアイスクリームのカップや牛丼の容器などが製造されていました.これらの容器の製造にはまず紙に扇状のプリントをすることから始まります.このプリントされた紙を機械で精密にカットして紙コップの外周部分が出来上がり,次の生産ラインに送られます.これをカットされた紙コップの丸底と組み合わせ,糊で吹きつけ,熱で接着させます.これで紙コップが完成され,出荷するまで倉庫に保管されます.この製造過程で最も注目したことが品質管理でした.工場内は髪の毛一本さえ入らせないほどの徹底した管理体制を貫いており,その清潔さに目を見張るばかりでした.
また,不良品を一つもお客様の手に届けないよう,製造された容器の一つ一つに「漏れ試験」や「汚れチェック」などを入念に行っていました.
作られた商品の一つを手に取らせてもらうとヨーグルトカップや紙コップの縁の部分が丸めてあることの理由を説明してくれました.これはフランジと呼ばれるもので,口当たりをよくするだけでなく紙コップの強度を高め,フタの密閉性を高める効果があるそうです.また,「じゃがりこ」のようなスナック菓子には,カップ材料をアルミと紙の段層構造にすることで湿気・酸化防止をしていました.容器一つをここまで研究開発して追及するともはやただの入れ物ではなく,中身(主役)を最大限に活躍させてくれる「最高の引き立て役者」であることに感心しました.
工場見学後は,作られたばかりの紙コップでお茶を飲みながらディスカッションを和気藹々と行いました.やはり,ペットボトルと紙コップの両方を飲み比べると東罐興業のコップの方が圧倒的に飲みやすく,参加者全員が紙コップを使用しておいしく飲んでいました.この紙コップは昭和時代から作り続けているヒット商品であり,この他に現在工場では30 品目の容器を製造しているそうです.東罐興業では電気や機械専門の方を現在募集しているのでぜひ来て欲しいとのことでした.
楽しい時間もあっという間に過ぎてしまい,小田急線海老名駅で17 時頃に解散となりました.
富士通研究所と東罐興業の工場の二か所を順次見学することで一連のものづくりの流れを体感できました.富士通研究所では半導体やセラミックスといった材料で作られた製品に触れることで,セラミックスに対する学識をより深めることができました.また,セラミックス協会ではマイクロカプセルの研究発表が盛んに行われていますが,東罐興業の容器はまさに身近にあるマイクロカプセルならぬマクロカプセルと呼べる付加価値の高いものでした.訪問先の研究者や技術者の方々との対話は自分の将来を考えるための良い判断材料になりました.
最後に,富士通研究所と(株)東罐興業の 2 社を訪問先として選んでいただき,素敵な方々と話す機会を与えてくださいました国士館大学理工学部理工研究科の岡田繁先生に,この場をお借りして深くお礼を申し上げます.

平成19年度見学会(写真)



平成19年度見学会(募集要項)

日本セラミックス協会関東支部では学生或いは若い人向けように「平成19年度の会社見学」を企画致しました。会社見学会は神奈川県のほぼ中心を流れています相模川を挟んだ神奈川県厚木市森の里若宮にあります株式会社富士通研究所および海老名地域の綾瀬市小園にあります東罐興業株式会社の2社を見学致します。株式会社富士通研究所(神奈川県厚木市森の里若宮10-1)(資本金50億円)は、我々の生活の中でなくてはならない情報・伝達システムのパイオニア的な存在で、1)業務システムの開発、2)フォトニックネットダークやワイヤレスネットワークによる運用管理と通信技術の研究開発、3)画像・音声処理、4)家庭やオフィスで人間をサポートするロボットの研究、5)地球環境に配慮した材料開発やソリューションの研究を行っている大手企業です。一方、東洋製罐株式会社関連会社の一社で東罐興業株式会社(神奈川県綾瀬市小園841)(資本金15億3千万円)は、紙とプラスチック製品をベースとした加工製品を行っている企業です。特に、1)紙コップ製品としては、飲料用コップのベンディング用、マニュアル用コップ・厚紙コップ非木材紙コップ・チルド液体容器、冷菓・乳製品容器、2)段ボール製品、3)光触媒製品、4)常温あるいは耐寒用プラスチックコップ、5)農業用フイルムなど多くの容器と関連製品を開発している大手企業です。それらの会社を見学させてもらうことになりました。是非ともご参加下さいますようにお願い致します。

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成19年11月16日(金)

見学先および見学内容:
09:30 私鉄小田急線愛甲石田駅改札口集合
10:00 株式会社富士通研究所 見学
12:00 株式会社富士通研究所 昼食
13:20 私鉄小田急線愛甲石田駅
13:30 私鉄小田急線海老名駅
14:00 東罐興業株式会社 見学
16:50 見学会終了
17:30 私鉄小田急線海老名駅
17:30 私鉄小田急線海老名駅付近 懇親会
19:30 私鉄小田急線海老名駅 解散

集合:9時30分 私鉄小田急線愛甲石田駅改札口集合

参加費:2,000円(集合場所からの交通費と昼食費)(懇親会会費は別途徴収致します)

募集人数:20名程度

申し込み方法:
氏名、勤務先、役職名、Fax番号、E-mailアドレスをご記入のうえ、E-mailあるいはFaxにて下記宛に申込み下さい。学生の場合には大学院・学部の別と学年を明記して下さい。参加費の支払いや集合場所などについての詳細は参加申込み後に、連絡先に送付いたします。

締切:平成19年11月8日(木)

申し込み先:
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
国士舘大学理工学部理工学科 岡田 繁
E-mail: sokada@kokushikan.ac.jp
Tel 03-5481-3292 Fax 03-5481-3292