平成20年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部見学会の参加後記

日本大学大学院理工学研究科 物質応用化学専攻1 年 井上 敬二

 平成 20 年11 月14 日(金)に日本セラミックス協会関東支部の見学会が開催されました.本年の参加者は総勢29 名(内,学生16 名)であり,株式会社大倉陶園と東洋ガラス機械株式会社を見学させていただきました.まず,朝9 時30 分にJR 線戸塚駅に集合し,バスで20 分の場所にある大倉陶園に向かいました.
大倉陶園はノリタケカンパニー,TOTO,日本ガイシ,日本特殊陶業等の森村グループの一員であり,事業内容としましては硬質磁器製の洋食器,美的価値の高い陶磁器の製造・販売を行っている会社です.始めに,会議室にて大倉陶園の歴史や,岡染・エンボスといった製品の加工技術について説明を受けた後に,ホテルや店舗で実際に使用されている磁器の展示品を展示室にて鑑賞させていただきました.素人目で見てもどれもが美しい作品ばかりだったのですが,中には洞爺湖サミットで展示されたプレートもあり,その芸術的価値の高さを実感しました.この企業の特徴として,原料調達から製品までを工場で一貫して行っているということなので,次に原料倉庫・工場内に移動し,実際に製品が完成するまでの各工程を説明していただきながら見学しました.原料の調合,成形,素焼き,施釉,本焼き,検査,絵付けの各工程を見ましたが,最高1460℃にも達する本焼き窯の中でまばゆいほどの炎を受けて焼成し,素焼きの状態からは想像できないほど美しい姿に生まれ変わった磁器の姿を見た瞬間,私は大きな感動を覚えました.全体を通じて,職人技とも言える繊細な作業の連続によって作られる製品の中でも,僅かなミスも許さない姿勢に,企業理念である「良きが上にも良きものを」の精神が全体に浸透しているのだなと痛感しました.工場見学を終えて,会議室に戻ってから質疑応答を行い,玄関にて全員で記念撮影を行った後に次の見学先に向かいました.
次に,相鉄線鶴ヶ峰駅からバスで 15 分の場所にある東洋ガラス機械に向かいました.東洋ガラス機械は,東洋製罐グループに属する東洋ガラス株式会社の 100%出資会社で,業務内容としては,主に@びんや食器などのガラス容器,Aペットボトルなどのプラスチック容器の意匠設計,金型の設計および製造・販売,Bびん,食器,プラスチックの容器等製造用諸機械の設計,製造・販売の三つの軸に事業を展開しており,現在では製品の約8割を東洋ガラスに供給しています.こちらではまず,工場前にて全員で記念撮影を行い,場所を移動して会社概要・事業内容を説明していただいた後に,質疑応答を行いました.ペットボトルに関する回答の中に,「ペットボトルは本体のPET の本体とプラスチック製のふた部分の二種類から出来ており,飲み口にあたる部分は温度を上げることによってPETを結晶化させることによって強度を出している.」という説明を受けたとき,恥ずかしながら,私は普段からペットボトルを手にしているのに,そこまで注意して見たことがなかったと反省するとともに,原料がPET のみでペットボトルが製造される未来も近いのではないかと期待を膨らませました.
工場見学では,見学者が4つのグループに分かれて,素材の切り出しから金型の成形までの様々な工程と,びんやペットボトルの製造機械部品の製造現場を見学させていただきました.一口に金型と言っても,ペットボトルでは飲み口,側面,底面といったように部分的に成形されて,最終的にそれらを組み立てることによってひとつの金型を作り出しています.見学した中にはウォータージェットという,比較的厚みのない部品を切断する機械があり,これはガーネットの粉体を混合した水に約3t の水圧をかけて,切断したい部分に直接噴射していくものですが,勢いよく噴射された水によって瞬く間にアルミ板が切断されていく様は圧巻でした.また,ペットボトルの金型成形の際に,人がデータを入力するだけで,その通りの形に仕上げていく機械の作業を目にしたときに,きっと始めは人が金型に彫刻を彫る方法から始まり,次第に彫る作業を機械が担うことにより,より正確な金型を量産することが可能となっていったのであろう科学技術の進歩を目の当たりにしました.そして,機械で成形された金型は,最後の工程として人の手によって研磨・微調整がなされ,パーツを組み立てることによって完成形に仕上げられていました.ここでもやはり,機械の導入によって,金型をいくら精密に量産することができるようになったとしても,最後に必要なのはやはり人の手であり,またこの最後の作業があるために,日本はものづくり大国としての名があるのではないかと考えさせられました.
会社を出て,バスで鶴ヶ峰駅まで行った後に解散となりました.その後は,希望者で懇親会が催され,その場では先生方と学生が垣根を越えて,多岐にわたる話題で終始和気藹々とした雰囲気のうちに楽しむことができました.
日々の研究の中でよく目にする「焼成」や「成型」の文字ですが,今回の会社見学会を通じて,それらの文字が意味するものが,現実にどのようなカタチで存在し,実社会にどのようなカタチで寄与しているかを自身の肌でダイレクトに感じることができました.
最後になりましたが,このような有意義な見学会を開催していただきました,国士舘大学理工学部理工学研究科の岡田繁先生に感謝するとともに見学をさせていただきました株式会社大倉陶園と東洋ガラス機械株式会社の方々には深く御礼申し上げます.今後も,後輩や自身を含むその他多くの方にセラミックスの魅力を感じていただくために,次回の見学会の開催も楽しみにしております.

平成20年度見学会(写真)



平成20年度見学会(募集要項)

日本セラミックス協会関東支部では学生或いは若い人向けように「平成20年度の会社見学」を企画致しました。平成20年度の会社見学会は横浜市戸塚区にあります株式会社大倉陶園および横浜市旭区にあります東洋ガラス機械株式会社の2社を見学いたします。株式会社大倉陶園(横浜市戸塚区秋葉町20)は、創業1919年で90年近くの歴史のある会社で、我々の生活で必要不可欠な洋食器類の専門メーカで、磁器の美しさと独特の技法で、古い伝統を守りながら現代的な美しさを調和させた洋食器や美術的価値の高い陶磁器の製造販売を行っている企業です。一方、東洋ガラス機械株式会社(横浜市旭区川井本町76)は、創業1959年で50年近く歴史を刻んで、ガラスびん・食器の金型の機械メーカで、その歩みと共に技術を生かしたプラスチック容器の金型や各種容器の製造ラインの検査・包装・物流機械の製作、さらに、ガラスなどの各種難削材を切断するカッテイングマシンを保有し加工を行なっている企業です。それらの歴史ある会社を見学させてもらうことになりました。是非ともご参加下さいますようにお願い致します。.

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成20年11月14日(金)

見学先および見学内容:
09:30 JR東日本戸塚駅橋上改札口集合
10:00 株式会社大倉陶園見学
12:00 株式会社大倉陶園昼食
13:00 私鉄相鉄線緑園都市駅
13:30 私鉄相鉄線鶴ヶ峰駅
14:00 東洋ガラス機械株式会社見学
16:50 見学会終了
17:30 私鉄相鉄線鶴ヶ峰駅
17:30 私鉄相鉄線鶴ヶ峰駅付近 懇親会
19:30 私鉄相鉄線鶴ヶ峰駅 解散

集合:9時30分 JR東日本戸塚駅橋上改札口集合

参加費:1,500円(集合場所からの交通費と昼食費を含む)(ただし、懇親会会費は別途徴収致します)

募集人数:20名程度

申し込み方法:
氏名、勤務先、役職名、Fax番号、E-mailアドレスをご記入のうえ、E-mailあるいはFaxにて下記宛に申込み下さい。学生の場合には大学院・学部の別と学年を明記して下さい。参加費の支払いや集合場所などについての詳細は参加申込み後に、連絡先に送付いたします。

締切:平成20年11月5日(水)

申し込み先:
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
国士舘大学理工学部理工学科 岡田 繁
E-mail: sokada@kokushikan.ac.jp
Tel 03-5481-3292 Fax 03-5481-3292