平成21年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部見学会の参加後記

埼玉大学大学院理工学研究科 撹上 将規

 去る平成21年11月20日(金),平成21年度の会社見学会が開催されました.本年の参加者は33人(内,学生21人)であり,見学先として,株式会社信光社(横浜市栄区)と東芝ナノアナリシス株式会社(横浜市磯子区)を訪問いたしました.9時30分にJR京浜東北線・根岸線の本郷台駅に集合し,まずは信光社に徒歩で移動しました.
信光社は光学分野をはじめとした高機能性単結晶の開発・製造及びその加工を行っており,酸化物単結晶製造のスペシャリストとして国際的にも高く評価されている会社です.はじめに簡単な会社概要等をご説明いただいた後,4つのグループに分かれて社内を見学させていただきました.私たちのグループは,まず光ファイバー関連の製品を組み立てている部署から見学しました.アイソレーターや光ファイバーセンサの実物を見ながら光学結晶の役割をご説明いただき,これらの最終的なサイズや性能における光学結晶の重要性を理解することができました.次に展示室を見学しました.時計用窓から光ファイバー部品まで様々な製品が展示してあり,特に,TSMG法によって作製された巨大な原石とその加工品は目を引くものがありました.3ヶ所目としてベルヌーイ法による単結晶製造現場を見学しました.教科書等で一般的に見られるベルヌーイ法ですが,その装置や実際の製造現場を見る機会はなかなかないので,貴重な体験となりました.最後に製品の研磨工程を見学しました.工程としてはシンプルでしたが,装置構成や研磨剤量といった部分のノウハウとして長年培ってきた技術の粋が詰まっていると感じました.信光社を見学させていただいて,単結晶の製造に関して一貫した高度な技術をバックボーンとして持ち,その上で最先端技術に挑戦し,応用展開を目指していくという方針が,すばらしい製品を生み続けていく理由であると感じました.また,説明していただいた方をはじめとして社員の皆様の雰囲気がよく,会社としていい環境にあるのだなと思いました.ここでは実際に製造を行っている現場を間近で見学させていただき,我々が普段は触れることのできない企業の雰囲気を感じることができました.これは,学生を含め全員にとって貴重な体験になったのではないかと思います.そして最後にはお土産として「単結晶製のしおり」をいただき,まさに記念の一品となりました.本当にありがとうございました.
信光社にて昼食をとった後,電車で新杉田に移動し,東芝ナノアナリシス株式会社へと向かいました.
東芝ナノアナリシスは半導体・液晶・金属・セラミックス・高分子材料・原子力材料など,幅広い分野の材料・環境分析や評価を行っており,その蓄積された専門技術・知識を基にプロセスに精通した分析ソリューションを提供されています.はじめに業務内容の説明と分析における装置及び解析手法の解説をしていただきました.物理分析・化学分析における最新の分析手法をご紹介いただき,資料とともに非常にわかりやすくその内容を理解することができました.特に,アトムプローブ技術への取り組みについては,原子レベルでの微細・微量分析を平均化することなく可能とする手法はこれまでにないものであり,非常に興味深い内容でした.また,分析手法の開発だけではなくこのような最先端技術の開発への取り組みについてもお話を伺うことができ,非常に楽しい時間を過ごすことができました.その後,3 つのグループに分かれて解析室を見学させていただきました.当然ですが,大型の装置が何台も列挙している様子は壮大でした.二次元検出器を備えたμXRDやFIB で試料を作製したTEM などでは,研究室においてなじみのある装置が最先端の技術ではどのようになっているのかを感じることができたのではないでしょうか.個人的には,CCD を用いたXRD 解析やFIB 作製試料のTEM 観察など以前研究で関わっていた装置を見ることができ,懐かしくもありました.東芝ナノアナリシスを見学させていただいて,一般的な分析はもちろん,東芝グループということもあり,半導体等の故障解析やプロセス解析といった材料に強い分析会社であると感じました.材料分析では,小型化に伴ってより高度な分析技術が要求されるとともに,材料についての知識も必要となります.実際に現場を見学させていただいて,研究員の方々が高い技術と深い知識,そして情熱を持って仕事に取り組んでおられる様子を感じることができました.
本見学会に参加して,製造と材料分析という異なる分野の企業を見学することができ,特に私のような初心者や学生にとって非常に有意義な時間になったと思います.また,企業で実際に行われている活動を目にする機会は限られていますので,この見学会での時間を通して,これまでは文章でしか学べなかったこと,あるいはそれ以上の経験を,各自がはっきりとイメージすることができたのではないかと思います.
最後になりますが,このようなすばらしい見学会を企画,開催していただきました神奈川工科大学の伊熊泰郎先生,私たちのために貴重な時間を割いていただきました株式会社信光社及び東芝ナノアナリシス株式会社の方々をはじめ,本見学会開催にご尽力いただいた関係者の皆様に対し,この場をお借りして厚く御礼申し上げます.

平成21年度見学会(写真)



平成21年度見学会(募集要項)

日本セラミックス協会関東支部では学生あるいは若い人向けに「平成21年度の会社見学会」を下記のとおり企画しました.是非ご参加下さいますようお願いいたします.

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成21年11月20日(金)

見学先:
1. 信光社(横浜市栄区小菅ヶ谷2丁目4-1)
各種酸化物単結晶製品(サファイア、ルチル等)、光通信用デバイス(光アイソレータ、ルチルプリズム等)などの製造並びに販売。
2. 東芝ナノアナリシス(川崎市幸区小向東芝町1番地)
半導体製品、電子部品及びその品質信頼性評価用のユニット、素子の構造解析、材料分析、化学分析など。

集合:9時30分頃JR京浜東北・根岸線の本郷台駅に集合予定。詳細な時間配分等は後日申込者に配布予定。

参加費:1,000 円の予定

申し込み方法:
氏名、勤務先、役職名、Fax番号、e-mailアドレス(学生の場合はM1、B4などの学年も明記)をご記入のうえ、e-mailあるいはFaxにて下記宛にお申込下さい。

締切:平成21年11月12日(木)

申し込み先:
 〒243-0292 厚木市下荻野 1030 神奈川工科大学 応用化学科
 伊熊泰郎 e-mail: ikuma@chem.kanagawa-it.ac.jp
 Tel: 046-291-3102 Fax: 046-242-8760