平成23年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部見学会の参加後記

日本大学大学院理工学研究科 物質応用化学専攻 物質応用化学専攻 D2 森 健太郎

去る平成23年11月11日(金)に日本セラミックス協会関東支部主催,23年度見学会が開催されました.本年度の参加者は17名(内,学生11名)であり,太平洋セメント株式会社熊谷工場および,日本山村硝子株式会社埼玉工場を見学させていただきました.当日は朝9時30分にJR 籠原駅改札に集合し,タクシーにて太平洋セメント株式会社熊谷工場に向かいました.
 太平洋セメント株式会社熊谷工場は関東地方最大級のセメント工場であり,工場に到着した時より,建物や設備など,その全体的な大きさに驚かざるえませんでした.到着後,会社概要および熊谷工場に関する説明をしていただきました.まず,驚いたのは,環境に配慮したそのリサイクル技術です.廃タイヤを原料に利用するというリサイクルから始まった当社のリサイクル事業は,「廃棄物ゼロを目指して」のコンセプトの下,当社の技術力を駆使した様々なリサイクル方法の開発へと繋がっていきました.そして現在では自治体と協力し,周辺地域の廃棄物をも原料とする技術にまで高められておりました.世の中でリサイクルが叫ばれ始めた 80 年代から,当社はリサイクル技術の開発を始めたとのことで,世の流れをいち早くつかみ,ここまでの技術にまで高めたその技術力に脱帽しました.
 その後,工場の見学となり,用意していただいた車に乗り,工場内を回りました.まず始めに感じたのは,建物などひとつひとつが巨大であるという事です.到着した際にも,遠くからではありますが,建物などがかなり大きい事はわかっておりましたが,改めて間近に見ますと,巨大な城のように目の前にそびえ立っておりました.また,サスペンションプレヒータに上がらせていただいた際には,工場全体が見渡すことができ,敷地の広さ,セメント原料を焼く際に使用するロータリーキリングの大きさにただただ感心してしまいました.ただ当日は,ロータリーキリングは定期メンテナンス中であったため,動いている様子は実際には見られず,残念でありました.さらに,そのような広大な広さと巨大な施設に構成されているにも関わらず,工場全体で社員が 100 人程度しかいないという事にも驚きましたが,大部分を管理センターにて管理し,製品の品質管理も機械化している光景を目の当たりにした時には納得してしまいました.
 工場見学後,質疑応答の場にて様々な質問に快く答えていただき,その後,用意していただいたお弁当をご馳走になりました.最後に,全員で記念写真を撮影し,次の目的地である日本山本硝子の埼玉工場へタクシーで向かいました.
 次の見学先である日本山本硝子株式会社の埼玉工場は,業界シェアトップを誇るガラスびんカンパニーの主力工場で飲料用や食品用のガラス瓶などを生産しております.工場に到着すると,まず会社の概要の説明をしていただきました.その際,この埼玉工場では世界の 8%の瓶を生産していること,工場全体の燃料のガス化の完了,ビンの種類によって成型プロセスが 3 種類存在することなど説明をしていただきました.その後,工場見学に移りましたが,その際,白衣やヘアキャップなど無菌室に入るような装備から始まり,当社の品質管理に対する意気込みを感じました.
 工場見学では,始めに工場に隣接したケイ砂の倉庫に案内していただき,大量に山積みされたケイ砂を見ながら,白ビンと茶ビンで原料が異なり,白ビンは外国産の海底から産出されたケイ砂,茶ビンは日本産のケイ砂であることを説明していただきました.また,原料の一種であるカレットは,購入したものと工場内の不良品を再利用したものを使用していることなど,リサイクルに対する取り組みに関しても説明していただきました.そして実際に工場に入りますと,忙しなく稼動する機械の音と,熱せられ大量に流れていくガラスの熱気による別世界が広がっていました.装置の上からはかなりの速さで型枠に流れ込んでいく赤いガラス,その型枠の中で成型され出て来たガラスは,先ほどまで形のない流体から見慣れたビンの姿へとわずかな時間でその姿を変え,またひとつまたひとつと目の前を流れていきました.次の検査工程では,工程の大半が機械化されており,ビンのあらゆる角度から光学的な検査を行い,不適合なものは即時除外されていきました.しかし,そこまで自動化されているにも関わらず,最終検査は検査担当者の目であるということを聞き,ここまで機械化されたシステムですら最後は人の力には敵わないということに改めて人の力のすごさを感じました.その後,無事検査を終えたビンの梱包の工程も見せていただきました.その工程の中で一番印象的であった光景は,ダンボールとビンの段を何段にも積み,周りをラップで何重にも囲い梱包する作業でした.梱包の前の段階では,ダンボールとビンをただただ高く積み上げ,わずかな衝撃でも崩れてしまいそうな状態に見えるにも関わらず,絶妙な力加減のベルトコンベアの移動により梱包作業行われ,この作業に関しては,完全に計算された作業のできる機械でしかできないと感心しました.
 工場見学も終わり,当社にてビンが生産されているオロナミン C をいただきながらの疑応答の際には様々な質問が挙げられ,ガラスを加熱する炉は減産時であっても,効率の関係上常に火は絶やさないことや,ビン底にはどの工場で生産されたかが一目でわかるコードなどが刻まれていることなど,このような機会でなければ聞けないような様々な事に関して答えていただきました.最後に,玄関内にて記念撮影を行い,タクシーに乗り籠原駅まで戻り,その日は解散となりました.
 今回の工場見学では,両工場ともそのスケールの大きさにただただ驚嘆し,普段の実験室生活では触れられない,実社会での工業の現場の空気に実際に触れるという貴重な体験をさせていただきました.
 最後になりましたが,今回の見学会を開催していただいた日本大学理工学部の小嶋芳行先生に深く感謝するとともに,快く見学をさせていただきました太平洋セメント株式会社熊谷工場および日本山村硝子株式会社埼玉工場の皆様に深く感謝申し上げます.また,今後も多くの学生に,セラミックス製品の製造現場に触れ,そこで働く人々の生の声が聞けるこのような貴重な見学会を開催していただきますよう,よろしくお願いいたします.

平成23年度見学会(写真)



平成23年度見学会(募集要項)

日本セラミックス協会関東支部では恒例の「見学会」を企画致しました.本年度は埼玉県熊谷市にあります太平洋セメント株式会社熊谷工場,日本山村硝子株式会社埼玉工場の 2社を見学いたします.太平洋セメント株式会社の熊谷工場は関東地方最大級のセメント工場です.ここでは原料からセメントが生産される過程を見学させていただきます.日本山村硝子株式会社の埼玉工場は業界シェアトップを誇るガラスびんカンパニーの主力工場で飲料用や食品用のガラス瓶などを生産しております.ここでは原料からガラスびんが製造される工程を見学させていただきます.
是非ともご参加くださいますようにお願い致します.

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成23年11月11日(金)

見学先および見学内容:
9:30 JR 東日本 籠原駅改札口集合
10:00 太平洋セメント株式会社の見学
12:00 太平洋セメント株式会社 昼食
13:30 日本山村硝子株式会社 見学
16:00 JR 東日本 籠原駅 解散

集合:9時30分 JR 東日本籠原駅改札口

参加費:2,000 円(集合場所からの交通費と昼食費を含む)当日集めさせていただきます.

申し込み方法:
氏名,勤務先,役職名,FAX 番号,E-mail アドレスをご記入のうえ,E-mailあるいは FAX にて下記宛に申し込んでください.学生の場合には大学院・学部の別と学年を明記してください.集合場所などについての詳細は参加申し込み後,連絡先に送付いたします.

締切:平成23年11月4日(金)

申し込み先:
 〒101-8308 東京都千代田区神田駿河台 1-8
 日本大学理工学部物質応用化学科 小嶋芳行
 E-mail ykojima@chem.cst.nihon-u.ac.jp
 TEL 03-3259-0868 FAX 03-3293-7572