平成25年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部 見学会記

日本大学 大学院理工学研究科 金子 剛大

11月22日金曜日,日本セラミックス協会関東支部主催の見学会に参加しました.今回の見学先は埼玉県桶川市にあるMMCスーパーアロイ(株)と三共理化学(株)の本社(工場)の2ヶ所でした.見学先に伺う前に参加者(19名)は最寄の高崎線桶川駅に9 : 40に集合しました.そこからタクシーに分乗して,最初はMMCスーパーアロイに数分程で到着しました.
 MMCスーパーアロイではまず,10:00より常務取締役の須田様から前身が三菱マテリアル(株)桶川製作所であること,非鉄金属を用いた耐熱・耐食・耐磨耗性等に特化した合金「スーパーアロイ」の開発・製造・販売を行っていることなどの会社概要を説明して頂きました.その後,DVDを用いて火力・地熱発電タービン等のエネルギー分野,ジェットエンジン等の航空宇宙分野のみならず化学プラントと幅広い分野で必要であるスーパーアロイを製造しており,MMCスーパーアロイ(株)が日本の基幹・世界の変革を担っていることを学びました.また,鍛造シミュレーションや一貫生産体制を採用しており,高品質製品へのこだわりというものを感じました.
 10:30からの見学に先立って保護メガネ,軍手,白衣,マスク,ヘルメット,無線が渡され,それらを装備したのち,3班に分かれて見学しました.通常とは異なる装いに興奮を覚えつつ,見学が始まりました.最初の7000 tプレスは交換作業中でしたが,プレス機・併設されている炉・重機全てにおいてそれらのスケールの大きさに驚かされました.次の銅合金用5 tマルチもタイミングが悪く稼動していませんでした.しかし,移動中には多種多様なインゴットが並べられており,担当の方からこれらのインゴットが航空機のエンジン部に使われるものだと教えて頂きました.飛行機好きの私としては興奮を覚えつつ2000 tプレス・リングミル工場へと向かいました.ここでは,マスクの着用が必須であり,場内からは金属を鍛造する叩く音が響いていました.いざ建屋の中へ入ると真っ赤に加熱されたインゴットの成形が行われていました.上部からプレスするオペレーターと横からインゴットを重機で巧みに操る操縦士が,素早い動きで棒状から円柱状や多角柱に目の前で変化させていました.成形の完了したインゴットを炉へ運ぶとそのプレス機の向かい側にはもう1台の重機が新たなインゴットを持って待機していました.奥でも重機が稼動しており,加工中の製品を器用に裏返ししたり,炉から出し入れを行っていました.お互いに連携の取れた効率的な作業に,ものづくりのノウハウを目の当たりにしました.最後は,要である総合検査場に向かいました.そこには自身の顔が映るほど磨き貫かれた製品の数々が並べられていました.製品外部だけでなく,内部の歪みも浸水超音波で検査しており,製品に対する揺ぎ無い信念を感じました.その後,着替えて11:45から質疑応答に移りました.そこでは,須田様から一つの溶解炉で多様な合金を溶解するために,コンタミを考えて純度の高い金属から溶解する炉繰りを計画していること,工程中で発生する端材のリサイクルでは同一材質の原料に戻すほかに組成を計算して他材質の原料にも加えることを教えて頂き,新発見の連続でした.
 昼食の後に徒歩で移動し,隣接する三共理化学へと向かいました.こちらでは13:30より中林様から会社の概略を伺い,研磨はものづくりの基本的技術の1つであり,産業の発展に不可欠であること,そして,市場創造への挑戦を進めていることを説明して頂きました.また,DVDのほかにも講義形式で研磨についての説明もして頂きました.多種多様な研磨製品がありますが,基本的には@ 基材,A 砥粒,B 接着剤の3種類の無限ともいえる組み合わせから構成されていることは意外でした.砥粒にはアルミナ,炭化珪素,ダイヤモンドなどの身近な材料も用いられており,研磨の奥深さを感じました.
 予備知識を踏まえた上で2班に分かれての見学となりました.一連の紙やすりの製造工程を見させて頂きました.そこでは,基材となる何mもの紙がゆっくりと移動し,砥粒や接着剤の塗布・乾燥が行われていました.途中には放射線のマークのついた部屋があり,そこではガンマ線による品質検査が行われていることを後に伺いました.移動中,オーストリアやノルウェーから輸入した砥粒の袋が重ねられているのを目にしました.それは,砥粒の製造コストが電力コストによる影響が大きいためだそうです.発電コストが高く電気料金が高い国内で製造するより,北欧等の水力発電による安い電気料金で製造した方が輸入コストを考慮しても利益になると伺いました.単なる工場見学ではなく,利益を求める企業の姿勢も見学を通じて学ばせて頂きました.工場見学以外には普段目にする家庭用や様々な規格の工業用研磨を展示しているショールームも拝見しました.こちらでも,最後に質疑応答の時間が設けられていました.研磨紙を斜めにカットしているのは,後工程での紙同士の接着部分のなじみ良さや接着面積を大きくして強度を向上させるためと伺い,品質への思いを再度感じました.
 この見学を通じて,合金や研磨材などの種類には関係なく,消費者の求める品質を実現し提供する企業のあり方は変わらないことを再認識いたしました.また,ものづくりのノウハウの積み重ねが日本を支えていると思う1日でもありました.最後に,貴重な体験をさせて頂き,お世話になりましたMMCスーパーアロイ(株)と三共理化学(株)の担当者の皆様に対して深く御礼申し上げます.

平成25年度見学会(写真)



平成25年度見学会 参加者募集

終了しました

日本セラミックス協会関東支部では学生あるいは若い人向けに「平成25年度の会社見学会」を下記のとおり企画しました. 是非ご参加下さいますようお願いいたします.

主催:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成25年11月22日(金)

見学先:
1. MMCスーパーアロイ(株)(埼玉県桶川市上日出谷1230)
 見学内容:航空・宇宙,石油化学,半導体・エネルギー関連分野など過酷な使用環境で使われる高性能・高品質各種耐熱・耐食・耐摩耗合金等の開発・生産に関わる製造工程の見学
2. 三共理化学(株)(埼玉県桶川市泉2丁目2-18)
 見学内容:研磨布紙(いわゆる「紙やすり」)の一次原反の製造工程及び二次加工工程等の見学

集合:9時40分,高崎線桶川駅に集合(時間厳守).
詳細な時間配分等は後日申込者に連絡

参加費:1,500 円

申し込み方法:
氏名,勤務先,役職名,Fax番号,E-mailアドレス(学生の場合はM1,B4などの学年も明記)をご記入のうえ,E-mailあるいはFaxにて下記宛に申込下さい. 締切:平成25年11月14日(木)の12:00まで.なお,24名を超えた場合はその時点で締め切ります.

申し込み先:
〒102-8554
東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学 理工学部 物質生命理工学科
板谷清司
E-mail: itatani@sophia.ac.jp
Tel: 03-3238-3377
Fax: 03-3238-3361(学科事務室)