平成28年度見学会(参加報告)

日本セラミックス協会関東支部見学会 参加後記

東京工業大学 物質理工学院 材料系 D1久保田 雄太

 平成28年12月2日(金),日本セラミックス協会関東支部主催の会社見学会が開催されました。計28名の参加者でしたが,企画を担当された指導教員の松下伸広先生によると予定を大幅に超える数だそうです.
 当日,13:00にJR横浜線町田駅北口に集合後,タクシーに分乗してまずはデンカ株式会社デンカイノベーションセンターに向かいました.デンカイノベーションセンターは,デンカグループの中核的な研究開発拠点として2014年に発足しました.センターに到着後,大会議室において会社の歴史や事業展開,成長分野として「環境」,「エネルギー」,「健康」,「インフラ」の4分野を設定していること,センターが擁する先進技術研究所,ライフイノベーション研究所,インフラソリューション開発研究所の3組織がこれら4分野の開発に取り組んでいることなどをご紹介いただきました.特に印象深かったのは,事業展開が多岐に渡ることでした.カーバイドと化学肥料の生産から始まり,アセチレンなどの有機化学品や機能樹脂,カーバイド化学で培った高温反応制御技術を活かした炭化物や窒化物といったファインセラミックス,さらにはセメントや医薬品など,ここでは紹介しきれないほどです.まさに培った技術からの事業展開と企業成長のお手本を見ているかのような事業展開図でした.質問時間の際に「医療製品を扱うデンカ生研は,一見これまでの事業とは繋がっていないように見えますがどのように創設されたのでしょうか」という質問が出ました.これに対してお答えは「色々な事業を展開しよう試みた結果,成果が出て残ったのがデンカ生研です」というものでした.これから,企業成長を図る際には,時にはまったく新たな“畑”を耕して事業展開を図ることも必要なのだと感じ,大学研究室における研究テーマにも重なる部分があるように感じました.その後,2班に分かれてセンター内を見学させていただきました.仕切りが少なく開放的であり,ユニークな発想が浮かびそうな研究空間,センター随所から中庭を臨むことができる伸び伸びとした空間設計,最先端の研究を支える充実した分析装置,どれもこれも,自分もこのような場所で研究を行いたいと学生見学者に思わせる素晴らしいものでした.お土産として,デンカグループで開発された,隅々まで綺麗に印刷可能なラベルフィルムをパッケージに使用したペットボトルをいただきました.
 デンカイノベーションセンターの見学後,タクシーでJR古淵駅に移動し,JR横浜線でJR橋本駅へ,そこからはタクシーでスリーエムジャパン株式会社カスタマーテクニカルセンター(CTC)に移動しました.CTCでは,スリーエムの社名由来など会社説明の他,スリーエム製品の体験を思う存分にさせていただきました.会社説明では,まずスリーエムが米国ミネソタ州で鉱工業会社として始まったことをご紹介いただきました.ミネソタ州Minnesotaと鉱工業Mining & Manufacturingの頭文字からスリーエム(3M)となったそうです.この他,スリーエムは世界70ヶ国でビジネスを展開するグローバル企業であること,売上高は300億ドルと非常に大きな企業であること,また事業では皆さんも良く知るポスト・イットやテープなど文具のコンシューマー部門の他,研磨剤などのインダストリアル部門,電力ケーブル,光ファイバーなどのエレクトロニクス&エネルギー部門,広告や自動車,交通標識などに使用される反射シートなどのセーフティ&グラフィックス部門,ヘルスケア部門があり,ヘルスケア部門では聴診器までも手掛けていることをご紹介いただきました.お話を聞きながら感じたのは,ポスト・イットや強力粘着テープ,反射シートなどのスリーエム製品がどれも特徴的で独創的なアイデアにより生み出されているということでした.このような製品を生み出すことのできる研究・開発が,スリーエムが世界70ヶ国でビジネスを展開する強みになっているのではないかと感じました.スリーエム製品の体験では,開発された吸音材で騒音がいかに抑えられるか,小惑星探査機「はやぶさ」からイトカワに投下されたターゲットマーカーではいかに光が発せられた点に集中的に反射されるか,交通標識に貼られた反射シートがいかに少ない光で鮮明に光るかなどを体験させていただきました.スリーエム製品の素晴らしさを感じるとともに,自らの研究・開発成果が実際に目に見える製品になったらいかにやりがいを感じるだろうか,と考えさせられました.お土産として,スリーエム製品のポスト・イットや粘着クリーナー,クロスなどをいただきました.
 スリーエムジャパン株式会社CTCの見学終了後,タクシーでJR橋本駅に戻り,そこで記念撮影をして18:00過ぎに解散しました.非常に盛り沢山な見学会であったため見学先で記念撮影を行えなかったこと,日本セラミックス協会関東支部の旗を持参し忘れたことを松下先生が悔やまれていたのも印象的でした.今回見学会に参加した学生からは,「研究施設を見学することで,将来自分が働く様子を想像することができた」,「同じ日に2社見学することで,企業の成長戦略や研究組織の違いを比較することができて良かった」という意見があった反面,「企業ではどのように研究を進めているのか,研究者から詳しくお話を聞きたかった」,「もう一歩踏み込んだ,分析装置など研究施設の見学と,実際の研究風景を見たかった」などの意見もありました.
 最後になりましたが,今回の見学会を企画・開催してくださった指導教員の松下伸広先生は無論のこと,見学会をご快諾くださったデンカ株式会社,スリーエムジャパン株式会社の皆さまにこの場を借りて厚く御礼申し上げます.
 また,日本セラミックス協会関東支部の皆様には私達学生が企業を知り,企業の方から直接お話を伺うことのできる貴重な見学会を今後ともぜひ継続して頂けますようお願い申し上げます.

平成28年度見学会(写真)


見学先での写真撮影を忘れていることに気付き,JR橋本駅で撮った参加者の集合写真

平成28年度見学会 参加者募集

終了しました
主催
:日本セラミックス協会関東支部

日時:平成28年12月2日(金)

見学先:デンカ株式会社,スリーエムジャパン株式会社

募集人数:20名 (人数に到達次第締めきりとなります

応募方法:下記担当者にメールで,氏名・所属・学年(または職位)をお知らせください.

申込先:東京工業大学 物質理工学院 材料系 松下伸広
E-mail:matsushita.n.ab※m.titech.ac.jp
    ◎スパムメール対策のため@の代わりに※が入っています.
     お手数ですが送信の際は@に変換してご送信ください.

申込締切日時: 2016年11月18日(金)午後5時

参加費:1000円 (最寄駅と見学先間のタクシー代の一部とします)

当日のスケジュール(案)
13:00           JR横浜線 町田駅北口集合

13:10           タクシーでデンカ(株)デンカイノベーションセンターへ

13:20〜15:00    同センターを見学し,終了後タクシーでJR古淵駅へ

15:24           JR古淵駅からJR橋本駅へJR横浜線で移動 (電車賃は各自払い)

15:35           JR橋本駅からタクシーでスリーエムジャパン(株)相模原事業所へ

16:00〜17:40    同事業所を見学後タクシーでJR橋本駅へ

18:00頃     橋本駅にて解散

見学先説明
 デンカ株式会社デンカイノベーションセンターは,将来に向けた価値創造のためのイノベーションを行うデンカグループの中核的研究開発拠点として2014年に発足しました.「環境」「エネルギー」「健康」「インフラ」という4分野について,先進技術研究所,ライフイノベーション研究所,インフラソリューション開発研究所という3つの組織で,次の100年に向けたオープンイノベーションの舞台として研究開発を進めています.自社技術だけではなく他社やさまざまな研究機関の技術やアイデアを組み合わせることで,革新的な研究成果,製品開発に結びつけることを目指しています.今回の見学は,製品展示,分析機器,オープンラボを予定しています.

 スリーエムジャパン株式会社は,世界規模で粘着テープや反射材,接着剤,研磨材などの研究開発・生産・販売について世界的に展開している3Mのアジア初の現地法人として1960年に創業しました.その翌年に設立された相模原事業所内にあるのが,今回見学予定のカスタマーテクニカルセンター(CTC)です.CTCはスリーエムジャパン株式会社の技術者が顧客とのデモンストレーションやデータ分析を含めたFace to Faceでのディスカッションを通じて,課題解決やアイデア提案を行うためのソリューションセンターです.CTCには5万5,000種類に及ぶ製品と3Mの開発力のベースとなっている46のテクノロジープラットフォームが展示されています.