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第40回 東海若手セラミスト懇話会
2010 年 夏期セミナー開催報告

東海若手セラミスト懇話会
日本セラミックス協会東海支部


去る7月8日(木),9日(金)の2日間,日本セラミックス協会東海支部東海若手セラミスト懇話会の2010年夏期セミナーが岐阜県下呂市の山形屋で開催されました.今回は105名(講師:4名,一般:34名,学生:67名)の参加者を集め,招待講演2件,若手セラミスト基金による国際セッション1件,テーブルディスカッション52件(企業紹介1件,一般6件,学生45件),学位論文紹介1件,海外報告1件の発表が行われました.以下,進行順に内容を報告いたします.


1日目;定刻通り産業技術総合研究所の鈴木一行運営委員代表の挨拶により会が始まり,より良い懇話会にしていただくために活発な議論と積極的な情報交換を行っていただくよう挨拶がありました.

引き続き招待講演1として,島根大学の笹井亮先生より「低次元空間を利用した機能性材料創製:固体発光材料の開発と分子認識への展開」と題してお話をいただきました.(→写真1)島根県の観光スポットの出雲大社,石見銀山などの紹介から始まり,“低次元”,“イオン交換性層状化合物”をキーワードに発光性層状無機-有機複合系材料のご研究を紹介していただきました.低次元空間である層状化合物の層間に様々な物質を入れることで,様々な現象を発現させようというもので,特に(1)色素本来の発光特性を固体で実現するための複合化,(2)湿度応答を示すハイブリッド,(3)ガス中分子認識能を有するハイブリッドについて分かりやすくご講演していただきました.先生の分かりやすい話を聞いて,この系に興味を持たれた学生さんも多かったのではないでしょうか.

テーブルディスカッションのアピーリングタイム第1部が,招待講演1の後に行われました.夜に行われるテーブルディスカッションのアピールを一人30秒の持ち時間で1枚の資料を使って行ってもらいました.限られた時間の中で工夫を凝らした一生懸命のアピールが多く見られました.

続く招待講演2では,名古屋大学の岡崎健一先生から「新規金属ナノ構造体の作製とその光学特性」というタイトルでお話をいただきました.前半は研究室の研究内容を中心に紹介していただき、特に金属ナノ粒子の高純度溶液を,イオン液体とスパッタ蒸着を用いる事で作製に成功した研究例を紹介していただきました.後半はナノジャングルジムと名付けられたAuナノフレーム構造体の作製とその光学特性について紹介していただきました.非常にきれいな形のまさにジャングルジムがナノサイズで出来上がった写真を見て,多くの若手の研究者や学生さんが興味を持たれたことと思います.

テーブルディスカッションのアピーリングタイム第2部が,招待講演2の後に第1部と同様に行われました.

夕食を兼ねた意見交換会は,宴会場で行われました.至る所で会話に花が咲き交流の輪ができていました.非常に盛り上がり中締めの挨拶があった後も,多くの人が宴会場に残りテーブルディスカッションが始まる直前まで意見交換が続いていました.

テーブルディスカッションは52件の発表を4グループに分け,コアタイムを設定する形で進められました.(→写真2)このテーブルディスカッションとは,本会では恒例となっているポスターセッションの変形版で,発表ポスターをテーブル上に並べて発表する形式です.アルコール飲料を片手に持ちながらの議論であったことも手伝って会場はものすごい熱気で,至る所で質問が飛び交っていました.熱心な討論が22時30分過ぎまで続けられました.なお,参加者全員の投票により選ばれた優秀な発表に対して,最優秀発表賞(1件),優秀発表賞(4件)が贈られました.受賞者氏名,所属と発表題目は,本報告の最後に記した通りです.熱心な議論や交流は場所を移して催された二次会の会場で,3時過ぎまで続けられました.


2日目;若手セラミスト基金国際セッションとして,ファインセラミックスセンターの金基鉉先生による「Electron holography on Charging Effect of Non-conductive materials」と題したご講演を行っていただきました.冒頭で,先生の出身国である韓国の紹介をしていただきました.韓国は日本の隣の国ということで,非常になじみがある食事,お酒,韓流スターなどのお話があり,多くの方が興味を持ち韓国を訪れたいと思われたのではないでしょうか.後半は,これまで韓国で研究されてきた内容や,現在取り組まれている電子線ホログラフィーに関する研究内容を紹介していただきました.ZrO2などの非導電性物質の帯電効果を電子線ホログラフィーにより調べた内容から,この手法の応用に関する有望な将来性について講演していただきました.

今回も招待講演,国際セッションの講演に対する学生の質問の中から各講演につき1件ずつ,ベスト質問賞が贈られました.これは,学生が積極的に講演の質問に立つことを促すために考えられた賞で,ご講演いただいた先生に選考していただいております.今年で6年目となりますが,非常に多くの学生が積極的に質問に立つようになり,明らかに議論の活性化につながっていると思われます.今回の受賞者の氏名と所属は,本報告の最後に記した通りです.

学位論文紹介では豊橋技術科学大学の河村剛先生が「形態及び集合状態を制御した金ナノ粒子の作製とその光電子特性」というタイトルで,金ナノ粒子の形態や集合状態が表面プラズモン共鳴(SPR)及び表面増強ラマン散乱(SERS)に及ぼす影響について説明してくださいました.将来の学位取得に向けて刺激を受けた学生さんも多かったのではないでしょうか.

次に海外報告として,(株)豊田中央研究所の蒲沢和也先生より,アメリカのバージニア大学に滞在された際の研究活動,生活について報告していただきました.アメリカに住んで研究したことにより直接肌で感じることができたアメリカの研究スタイル,ノーベル賞受賞者を多く輩出する国柄についてお話いただきました.また,家族を連れて滞在した際の良かった点,苦労した点などについてもお話いただきました.学生さんにとってはなかなか聞けない貴重なお話になったことと思います.

最後に,テーブルディスカッション優秀発表賞とベスト質問賞の発表と表彰を行いました.最優秀発表賞を受賞した名古屋工業大学,産業技術総合研究所の野々山貴行君には,鈴木代表が下呂合掌村で準備した,夢がかなう“かなうわバット”(→写真34)が贈られ,このバットに託した代表の思いが熱く語られました.最後に秋期講演会での再会を約束し,閉会しました.

例年本セミナーでは,カジュアルなスタイルでの参加を呼びかけており,今回もそのリラックスした雰囲気の中で活発な討論が行われました.また,合宿形式ということもあり,夜遅くまで研究のことだけでなく様々なことを語り合い,東海地区の若手が親睦を深める良い機会となりました.この場をお借りして,次回にもより多くの方々のご参加をいただけますよう,ご案内する次第です.

なお、本セミナーの詳細は、東海若手セラミスト懇話会の公式 Web サイトである http://www.atyc.org/ でも紹介しております。


優秀発表賞受賞者(敬称略)

最優秀発表賞
野々山 貴行 名古屋工業大学・産業技術総合研究所 「官能基秩序配列を有したペプチドスキャフォールド上でのミネラリゼーションによるリン酸カルシウムの合成」
優秀発表賞
兼松 巧 名古屋大学 「金属充填カーボンナノチューブの高温挙動に関する研究」
加藤 丈明 名古屋工業大学 「ゲルキャスティング法を用いたセラミックスへの導電性付与について」
熊澤 慶人 豊橋技術科学大学 「静電吸着複合法による粒界制御型セラミック複合材料の開発」
大橋 敬之 名古屋工業大学 「(Li,Na)NbO3系非鉛圧電セラミックスの誘電特性と分極電界依存」

ベスト質問賞受賞者(敬称略)

中埜 高史 名古屋工業大学
林 育生 豊橋技術科学大学
加賀 元了 名古屋工業大学

written by 青木 知裕(新東工業(株))


写真(画像をクリックすると拡大表示されます。)

invited lecture
写真1 招待講演
table discussion
写真2 テーブルディスカッション
present
写真3 運営委員代表特別賞表彰
present
写真4 運営委員代表特別賞副賞

開催案内を見る
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平成22年度事業

2010年11月18日 公開
2011年4月13日 修正
2014年11月19日 更新